秋の訪れと共に『熱さ』を失ってはいないか 第29節 vs水戸 ●0-1
- 2018.08.20
- GAME REPORT 雑感
またも、長谷部さんに勝てなかった。
得点を奪う事も出来なかった。
終了間際の失点は、たしかに堪えるものではあったけれども、
それ以上にジェフのパターン化された戦いが、
見透かされているようで悔しかった。
2016年終盤に指揮を執り、去年1年間はコーチとして、
一歩退いた立場の違いを忍耐しながら支えてくれた長谷部さん。
去年終盤と、今のジェフ。
この違いを、どう見ていたのだろうか。
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空は高く、絹雲がたなびき、やがて太陽が傾くと、燃えるような夕焼けが、
その絹雲たちを赤々と染め上げて、
幻想的とも言える光景を描き出していた。
が、ピッチの中で繰り広げられていたのは、泥臭い我慢比べ。
ボールをキープし、サイドを抉り、得点の糸口を掴もうとするジェフと、
それは先刻お見通しとばかりに、サイドに防御網を敷き、
ジェフが必ず隙を見せる、キーパーへのバックパスを掻っ攫わんと、
猟犬のように追尾するFWの槍衾を構える城への、
難解な攻城戦を仕掛けているように見えた。
そして、これは、幾度も見てきたパターンだ。
ガードの上から如何に手数を放ち、防御を破って、得点を奪い、
相手が城から打って出るように出来るか、だ。
前節、町田戦の後半に、反撃の機運を生んだ2人。
調子の良い選手を先発で使うのは、エスナイデル監督らしいチョイスだ。
スタンドにも『待ってたぞ俺達のNo.10』と手書き幕が掲げられ、
大きな声援が、何度も彼にかけられていた。
指宿→為田→指宿と繋ぎ、
そこから、右の溝渕に展開、一列中の船山に戻し、
後ろから飛び出してきた、アンドリューにスルーパス!
ペナルティエリアの中に進入したアンドリューへの対応は追いついていない。
惜しむらくは、アンドリューのクロスが不正確だったこと。
が、これは、本当に長らく見ることが出来なかったプレーで。
アンカーの攻撃参加、DFラインの裏への飛び出し、
これは、それこそ、オシム監督時代の阿部+勇人の組み合わせや、
あるいは、最後方からのイリアンの攻撃参加に匹敵するもの。
これをやられると、相手は、全く予想外で対応できない。
つまり、得点のチャンスが大きく広がる。
最初にこれを見せてくれた事で、今日はちょっと違うものをみせてくれるかと、
大きく期待をしたのだけれども、残念ながら、このワンプレーしか出せなかった。
が、パスもダイレクトで繋がり、素晴らしい連動だった。
この後ゲームは膠着するが、
解決のヒントは、自分たち自身のファーストプレーにあったと断言できる。
ジェフの攻撃に足りないのは、「意外性」と「主体性」だ。
試合全体を通じ、ボールを持っていたのは、この試合でもジェフだった。
が、シュート数で上回った前半でも、よりゴールに近かったのは水戸だったように思う。
5分の水戸のCKから、ジエゴのヘッド。
15分には、ジェフの左翼からクロスを立て続けに上げられ、
22分にも、DFライン裏へ送られたボールの対応に優也が遅れそうになり、
後ろ向きでボールをキャッチする危ういピンチが続く。
松本戦や、町田戦でも感じた、細部の詰めを、水戸もまた徹底している。
優也がボールを持つと、近くのDFにボールを繋ぐ。
そこには常に2人が居る。
矢田、茶島がボールを持てば、周りから選手が囲み、縦パスを防ぐ。
この時、ボールを引き出す動きが乏しいジェフは、わざと空けられたサイドに送るか、
もしくは、プレスを嫌って、逆サイドに各駅停車でボールを回すしかない。
たまに、最終ラインから逆サイドにフィードを送ろうとするものの、
そのボールは、目的の選手に届く手前でクリアされる事が多かった。
ジェフは、攻めあぐむ中、サイド攻撃にこの試合も頼っていた。
エスナイデル監督は、町田戦の前にも「縦に速く」を意識付けしようとしている。
クロスだけでなく、中からも攻めたい。
けれど、それを選手が体現できない。
そこに監督はもどかしさを感じているし、
我々見ている側は、プレーで表現できるよう、仕込めない監督にもどかしさを感じている。
「分かっているのに、出来ない」が、この試合でも続いた。
そうして、頼みの綱のサイド攻撃。
振り返ってみれば、水戸が警戒して、守備網を敷いていたわりには、
特に為田&下平、船山&溝渕は、よく抜け出してクロスを上げるところまでは行っていた。
が、そこからの精度が、致命的に低かった。
上げても、明後日の方向に飛ぶ、キーパーにセーブされる、DFにクリアされる。
生きて、味方にたどり着いたクロスがほとんど無い。
精度の問題と、中に飛び込む選手が少ないのと、両方。
「遅い」
「意外性が無い」
DFラインとキーパーの間にアーリークロス、
そこに何人もの選手が飛び出す---ような、
教科書通りのプレーも欲しい。
粘りに粘って、ゴールライン間際からの苦しいクロス、だけじゃ辛い。
相手は、そんなに毎試合、ハンドをしてくれはしない。
58分、船山のCKから、指宿のヘッド。
87分、船山から為田へ繋ぎクロス、船山、
そして、交代出場の也真人がシュートチャンスを掴むも、ボールは力なくキーパーへ。
本調子なら、決めていただろう。
本調子なら、決めていただろう。
チャンスは、この2回ぐらいだったのではないだろうか。
局面を打開する、目の覚めるような連携は、今日はまだ見られなかった。
試合も残り少なくなり、迎えた90分。
ジエゴのロングスローをクリアしたボールが、伊藤選手の目の前に。
詰める事も出来ずに、フリーで正面から叩き込まれ、ゲームを決められた。
攻めあぐねていた城から、最後に突然、大砲が出てきたようなものだ。
監督は、これを詰められなかったミスというが、
それまでに攻め切れなかったジェフの攻撃精度の方が問題だ。
この先、攻撃もますます停滞するだろう。
選手達は頑張っているが、攻守共に「ワンパターン」。
毎試合、悪い意味で、いつか見た試合のリプレイを見ているかのようだ。
発見に乏しい。
もちろん、復帰した也真人や、浩平、茶島、矢田ら、アイデアのある中盤に期待はかかる。
しかし、彼らのアイデアを生かす為にも、チームとして、
相手の意表を衝く為に、誰が、どう動いてパスコースを作るのか、もっと練習で煮詰めて欲しい。
悔しさもあったのだろうが、正直、これだけだと監督の考えが伝わって来ない。
考え方どころか、『熱さ』も伝わって来ない。
この試合にどう臨み、何が悪かったから負けたのか。
どんな練習をして、出来た事はなんだったのか。
選手達への評価は?
この成績でも遠征してくるサポへ、
自分を信じてもらうために、何か伝える事はないのか?
これだけじゃ、「Pasio’n」が伝わって来ないんだ。
監督も、高橋GMもそうだ。
もっと話そう。もっと語ろう。
みんな苦しいんだ。
みんな苦しいんだ。
だから、どう苦しんでいるのかは、どう考えているのかは、オープンにして欲しいんだ。
それが伝わらなければ、分からないし、冷めてしまう。
『諦めない』ってのは、『冷めない』ってことでもあるはずだ。
一つ一つの会見、一つ一つの言葉が、チームの結束を固くもすれば、
綻ばせると言う事を、指揮官には分かって欲しい。
失点しても、声援はますます大きくなった。
試合が終わった後も、悔しさを堪えて、みんな選手達を迎えていた。
そうでなければ、容易にこの結束は崩れてしまうから。
誰かのせいじゃない、皆で自分のパートを背負って乗り切る心をもって。
そのために、指揮官も、GMも『熱さ』を忘れないで欲しい。
辛い、敗戦の後であっても。
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