そこにPasio’nはあったか 第19節 vs水戸 ●1-3
- 2017.06.18
- GAME REPORT 雑感
ショックな敗戦だった。
スコア以上に内容は完敗。
試合前、水戸が直近3連勝で11試合負けなし。
いいゲームを続けているのは知っていた。
けれど、ジェフとて前節は首位・福岡に互角以上の戦いを見せ、メンバーも徐々に固まって来た。
ようやく反転攻勢への明るい兆しが見えて来たと感じていただけに。
その淡い期待を、ガツンと頬を叩かれて、吹き飛ばされたようなゲームだった。
久しぶりの水戸は快晴。
先週のフクアリと違って、砂嵐も無く、気温もそこまで上がらず、初夏の爽やかな気候だった。
道すがら、後援会バスの車窓から見える青々とした田んぼや、栗の花が織り成す里山の風景が綺麗で、それに目を奪われていると、高速を降りてほどなくスタジアムへ着いた。
駐車場に着くと、なにやらアニメの大きな横断幕がお出迎え。
水戸はアウェイゲートのすぐ近くにバスを停めてくれるので、楽チンでありがたい。
キックオフまでしばらく時間が合ったので、屋台村を回って腹ごしらえ。
来るたびに食べ物も充実して来ているし、サポーターも増えている。
時間はかかっているけれども、水戸と言うチームが少しずつ良くなって来ているのを感じる。
さて。
メンバーが発表されると、福岡戦と全く同じメンバー。
前節、引き分けとは言え、悪くないと思っていたので、監督が同じ考えでいてくれたようなのが嬉しかった。前節は勝てなかったが、今日の課題は、どう点を獲って結果を出すかだ。
スタジアムに入ると、ジェフサポの数は数年前よりだいぶ減ったように感じる。
水戸をアウェイジャックするくらいの年もあったのだけれど、今年は普通にアウェイを感じさせる人数しか居ない。動員は、成績、愛着と表裏一体。そのいずれも、今のジェフは作りかけの段階だ。
18時のキックオフ。
まだまだ陽が残っていて、メインスタンドの屋根の少し上辺りに夕陽が下りてきている。
空は、頭の上が濃い青で、絹のヴェールのような雲が、何本も南北に流れている。
試合開始と共に、お互いつば競り合いのように前線からのプレスの掛け合いが始まる。
水戸は、前の2枚、林と前田が猛然とプレスをかけてくる。
後のスタミナのことなどまるで考えないような激しいプレスだ。
古いジェフサポには、まるで、「大柴克友」が2人いるかのようと言えば、その激しさが分かるだろうか。ボールを下げても、猛然と喰らい付いて来る2人を、ジェフのディフェンスラインは明らかに嫌がっていた。
加えて、水戸のディフェンスラインが異様に高い。
ほとんど、ジェフと同じような高さだ。
つまるところ、両チームは、同じようなハイライン・ハイプレスで、ぶつかり合っていた。
選手達は非常に狭い範囲の中でプレスをかけ合い、そこから攻撃の打開を図っていた。
それでも序盤、シュートまでもっていく事が出来ていたのは、ジェフのほうだった。
サイドチェンジを駆使し、右の也真人、船山、山本真が絡んで、中央の指宿げへボールをあわせる。
決定的とは言いがたかったものの、全くシュートまでもって行けない水戸よりも若干攻め手はあった。
けれど、それも序盤までだった。
狭いエリアでの戦いが続く中、その中で強さを見せたのは水戸だった。
前線の2人だけでなく、その他の選手もプレスが速い上に、局面局面での攻防戦で泥臭く粘り強い。
しぶとく追って、ミスを誘って、ボールを奪っては、シンプルに前線へボールを送り込む。
対するジェフは、緩慢なプレスで後手を踏む。これまでも「ハイライン」は兎も角、「ハイプレス」には疑問符だったが、この日は明らかに「ハイプレス」を実践していたのは水戸。ジェフは、時間とともに、ごちゃごちゃとボールを繋ぎすぎて渋滞する事が多くなり、也真人、高橋の二人が、効果的に動く事ができなくなっていた。
攻勢を強める水戸にビッグチャンス。
完全に崩されてシュートを放たれるものの、山本真が間一髪でクリアする危ない場面を作られる。
ジェフも、その後一本決定機を迎えるものの、ペースは水戸が掴みつつあった。
そして、39分。水戸は、奪ったボールを橋本が中央から強烈なミドルシュート。
山本海の頭上に突き刺さる豪快な一発で、先制を許してしまう。
だが、まだ1失点。水戸の圧力に苦しんだ前半が終わり、ハーフタイムに入る。
ピッチには、誰も練習に出ていない。
監督から、檄が飛んでいるのだろうか。
だが、後半頭の交代は無い。
同じメンバーが、ピッチに散っていく。
そして、後半開始の笛とともに、まず仕掛けようとしたのはジェフだったが、それを見透かしたかのように、また猛然と水戸のプレスが襲い掛かる。そして。奪われたボールを前線へ一気に運ばれると、前田のミドルシュートが、ゴールに突き刺さっていた。
ちょうど、軌道が真後ろから見える形で。
アウトサイドで強烈に蹴ったボールが、ポスト左に切れるかと言う軌道で放たれた後、右に急激に曲がって山本海の指先をかすめ、ポストにぶち当たってネットを揺らしていた。
ぐうの音も出な
ファインゴールだが、前田の前に居た乾は、体のどこに当ててでも、シュートを撃たせないようにプレッシャーをかけるべきではなかったか。先制点もそうだが、なぜ、こうも気持ちよくシュートを撃たせてしまうのか。これではまるで、横浜FC戦の再現ではないか。
そして、これまでも何度か合った、「後半頭に出鼻を挫かれる」シーンをまたも観てしまったのが悲しかった。この試合、プレスや、局面の戦いでも、後半頭のさあ行くぞ、と言う場面でも、ジェフは「闘い負けて」しまっているのだ。
水戸は、連勝で各選手が自信を持っていたのもあるだろう。
各選手が、走り、闘うことを、忠実にやっているからこそ、決定機が作れるし、シュートが枠に飛ぶくらい、フリーで撃てているのだった。
首尾よく2点のリードを奪った水戸は、守りきるために早めにパウロンを投入。
やることをより明確化して、選手のプレーをソリッドにしていく。
西ヶ谷監督は、2015年6月の就任で、ちょうど3年目に入るところだ。
2015年が19位、2016年が13位と苦労したが、迎えた今年、結果を出しつつある。
ジェフは、高橋と船山に代えて、熊谷とラリベイを同時投入。
しかし、流れは変えられずに、62分には決定的な3失点目を喫してしまう。
反撃の間、指宿がポスト直撃弾や、フリーであと少しというシュートも放ってはいるものの、少ないチャンスを決められたか、決められなかったかは、スコアに大きな差をつけてしまった。水戸は、得点のシーンでシュートが振り切れていたけれども、ジェフは、プレッシャーを受けながらのシュートだった。決定力のディティールを詰めれば、よりフリーに、より速くシュートを撃てているか、また逆により速く、厳しく詰める事が出来ているか、その差に帰結してくる。
それにしても、水戸のプレスは素晴らしかった。
後半、時間が過ぎていっても、一向に強度が落ちない。
涼しい気候のせい?連勝を続けて居ることが、気持ちを強くしている?いや、そうじゃない。
練習の成果だろう。間違いなく、水戸の方が、走る練習、闘う練習をしているのだ。
監督どうこうじゃなく、一人一人の意識を高く持って。
ジェフは、何が何でも勝とうとする姿勢を見せなくてはならなかったが、ピッチで闘う選手の気持ちは、必ずしも一つでなかったように思う。途中出場した熊谷が、緩いパスを何度か相手に詰められるシーンを観てしまうと、過去のミスに対する反省も、この試合を外から観ていて、自分が出たならばどうやって打開してやろうかと考える、準備に対するプロ意識の低さを感じざるを得なかった。
もう、あと何年プレーできるか分からないベテランが居る。
やっと試合出場機会を掴んだ移籍選手が居る。
中心選手といわれる選手が居る。
出番を掴んだ若手が居る。
なかなか試合に出られない助っ人が居る。
それぞれの思いは、あるだろう。
チームスポーツならではの難しさ、意思を一つに凝固する難しさはある。
そうであっても、目の前の相手を叩き潰すと言う戦う気持ちを、一人ひとりが持ち続けることは、プロとして最低限のことだ。負けているゲームなんだ。その中であっても、いま、ピッチに立っている意味を、どうにかして見せつける、そう言う気持ちだけは見せるというのが、「Pasio’n」を掲げた今年の公約ではないのか。
決して、全員がそうであったとは言わない。
けれど、チームとして見た時、水戸が明らかに走っていた、闘っていたと感じてしまったのは、この敗戦がただの負け以上に堪えた原因だった。
これは果たして、監督が、戦術がどうこう、と言う問題なのだろうか。
毎年、誰が監督でも、選手が変わっても、だんだんと同じような試合を見せられてしまうのは、なぜだろうか。根っこの部分、戦う意識が何故萎えて行ってしまうのか。
それを思うと、どこか、このクラブに甘えがあるような気がしてならない。
かつて御大が、「日曜日のようだ」と語ったように。
誰も足を吊るような事も無く、敗戦を受け容れてしまった。
監督も、選手も、「Pasio’n」が伝わる試合を今日は何故出来なかったのか。
それを良く考えて、次のゲームに臨んで欲しい。
誰のせいでもない。
監督も、選手も、一つになってやるしかないんだ。
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