第1節・ガンバ大阪戦(@万博)

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長い冬が終わり、迎えた万博での開幕戦。
戦力が充実し、全てのタイトル奪取を目論むガンバとの戦いは、「守」対「攻」のぶつかり合いの果て、大方の予想を裏切って引き分け・勝ち点1の奪取と言う上々の結果となった。


ガンバ陣営にとっては予想外の結果かも知れないが、この結果は戦前から試合に臨む姿勢の差からも、ある程度想像が出来たのではなかっただろうか。ガンバ側からしてみれば、PSMの結果も華々しく、待ちに待ったホーム開幕。スタジアム前の広場にたむろするサポーター達も、ピリピリとした空気は無く、楽勝を信じて疑わない。各種の報道も、大量得点の勝利を期待する、そんな緩い空気のものばかりだった。


「そうはいくか。」


ジェフサポの誰もが、そう思っていたに違いない。
去年の主力が抜けようと、今の11人がベストメンバー。劣勢は予想されても、簡単にはいかない事を見せつけてやる。今できる事を全部出し尽くして、一泡吹かせてやる。誰もが、強い気持ちを持って、スタジアムでPVで、どこかでこの試合を迎えていた。


スタメンには、ボスナー、マツケン、青木良太ら新戦力の名前が並ぶ。
だが、試合が始まって驚いたのは、その布陣だった。これまでずっと、4バックでプレーしていたにも関わらず、始まってみれば3バック。いや、5バックか。これには、ガンバの西野監督も驚いたと言う。バレー、ルーカスの2トップを食い止める為の布陣変更だった。


----巻誠----
-孝太----工藤-
--下村--中島--
坂本------松本
--良太--大輔--
----エド----
----立石----


対するガンバは、4-4-2で中盤をボックスにしたオーソドックスな布陣。
FWには、マグノに代えて元東京のルーカス、右SBには、怪我の加地に代えて元山形の佐々木、そしてDFにはシジクレイに代えて水本だ。


--ルカ--バレ--
二川------遠藤
--明神--橋本--
安兄------佐々
--山口--水本--
----藤ヶ----


こうして見ると、育成のイメージもあるガンバだが、移籍獲得選手は9人に及ぶ。
生え抜きに抜けられて、移籍選手が増えたウチとは事情が違うが、ガンバもだいぶ面子が変わってきた印象を受ける。


攻撃陣に自信を持つガンバ。
試合は、予想通り攻めるガンバをジェフが受け止める形になった。


ガンバは、やはり前線の2人が厄介。
バレーは、完全にフィニッシュを請け負い、ルーカスはキープ力を活かしてゲームを組み立てる。役割分担のハッキリした2トップを軸に、両翼からのクロスも織り交ぜて攻めるガンバに、良太が復帰したばかりと連携もまだ整わないジェフは押されっぱなしとなる。


枚数をかけて守るしかないジェフは、とにかく球際を厳しくして相手のイメージ通りにはさせないように試みるが、やはり錬度の差は大きい。
いきなり、右からのクロスがバレーの頭に合い、ポストを叩き、中距離からのミドルが、ゴールマウスを横切り、遠藤のFKが強襲する。


なんとか弾き返しては、前に繋ごうとするものの、攻め手と言えば孝太の突破くらいなもの。押し込まれて、全体が狭いエリアに密集してしまっている為、攻撃陣が分断されてしまっている。巻も孤立無援。クリアボールへのプレスと、セットプレー時のディフェンスが主な仕事と言うくらいになっていた。


何とか攻撃をしのぐジェフ。
中心には、やはりボスナーが居た。ちばぎんでも、その力の一端を見せた彼だが、何せ、高くて強い。ハイボールをクリアしまくる姿は、正に城砦と言った様だ。ガンバのサポは、シジクレイが相手に居る気分が分かったのではないだろうか。
最後の一線は、ボスナーと立石が踏ん張って割らせない。


守備陣の頑張りに、ガンバは意地になって攻め立てる。
そこに、少しずつスキが出来る。孝太・マツケンが、思い切りある突破を見せ、少ないながらもカウンターの形を作って反撃する。前半唯一とも言えるチャンスは、そこから坂本に繋がった一撃。だが、さすがにガンバも持ち堪える。


じりじりとした前半が終わる。
なんとか持ち堪えた。この時間が長く続けば、それだけジェフに有利になる。


後半開始早々、工藤から巻へのクロスが入る。
巻、この日唯一のチャンスは、藤ヶ谷にかき出される。
何度か、チャンスになりかけるが、決定機と言えるのは、これが最後か。
後は、ひたすらにガンバの攻撃が続く。


最終ラインに鎮座したボスナーの対空戦闘はいよいよ激しくなり、大きく蹴ったクリアボールが、長い滞空時間でガンバのDFラインに落っこちてくる。水本に渡ればブーイング、その繰り返しだ。


だが、ジェフには焦りは何も無い。
むしろ、この沈黙の時間こそがジェフペース。時間が経てば経つほどに、ガンバの焦りは増し、ジェフは凌ぎきろうと言う意思統一が明確になる。面白いサッカーじゃない。けれども、今出来ることをやる。やりきる。それが自信になる。


ガンバは、次々に攻撃の駒を切り、プレッシャーをかける。
けれども、時間と共に、攻撃は単調になる。崩されたピンチには、立石が立ちはだかる。ガンバ戦と言えば立石。この日も、その存在感は圧倒的だった。後半半ば過ぎからのピンチを腕一本で弾きまくる。
次第に焦燥感が募る万博。試合前の空気は、もう無い。
万博の焦りを取り込むように、ジェフサポの空気は熱くなる。


そして、90分が終了。
耐えて奪ったこの結果に、充実感のこぶしを握るジェフの選手達。
スタンドも、「よくやった」と言う空気に満ちる。
挨拶に来た選手達の顔も清々しい。


対照的に、ざわりとした万博のバックスタンド。まばらな拍手。
そして、ゴール裏からのブーイング。
同じ、ドローと言う結果に、こうも違う反応。


それは、悔しいが今のウチの身の程でもある。数年前、ガンバと互角以上に渡り合い、ナビスコの初戴冠をしたあの日のジェフはもうない。格下として戦い、格上から奪った勝ち点に喜んでいるに過ぎない。
けれども、長い冬の先に、新しいジェフの可能性を期待感を持って見れたことを素直に喜んだ。新しいジェフが、ここからまた積み重ねられるのだと信じられた。それが何よりも大きい。


今はまだ、このサッカーしか出来ない。
けれども、またここから創り出せる。ジェフがその歴史の中で得たものは、何一つ消えてはいない。苦しいシーズンになるかも知れない、それでも、上を見て戦っていく。ジェフは、ジェフであることを再確認出来た開幕戦。
胸を張って、ユニフォームを着たまま、ガンバサポをかき分けて万博を後にした。