6/8(木)・ナビスコ杯準々決勝(2)・セレッソ大阪戦
- 2006.06.10
- GAME REPORT
長居で5-2の勝利を収めたジェフにとっては、如何に弛緩しないでこの試合を戦うかがテーマだった。圧倒的に優位な状況になれば、誰もが気が緩む。「どうせだったらこの機会に若手を試せば良いのに」だとか、「0-3で負けたって勝ち抜けなんだから」そう思っても不思議じゃない。けれども、振り返ってみると大して強くもないのにそう言うことを考えてしまう自分達の中にこそ、これまで強くなりきれなかった、大事な試合で勝てない“中位のメンタリティ”が潜んでいたのではないか。
オシム監督がこの試合に求めたのは、その打破だった。だからこそ、試合前にフクアリで練習を行い、そして今日のスタメンにもイエローの累積を恐れずにフルメンバーを送り込んで来たのだと思う。
大輔を欠くスタメンは、ついに2-7-1のシステムとなった。
もっとも、ディフェンスには阿部や坂本が常にフォローに動くので、いつも2人だけで守っているわけではもちろんない。マークをずらさぬよう、お互いが連動して相手を押さえ込んでいる。
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--09--22--
16------08
-02-07-06-
--05--04--
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特に、右サイドでは阿部が若い水本・水野を従え、しきりにピッチ上で指示を与えている。時には言い合いをするような激しいやり取りに、良い意味での緊張感を感じる。若手の二人も、全く物怖じする様子は無い。
そして試合は、最初から両チームの攻め合いでスタートした。
4得点を奪わなければならない、それでいてエースの西澤を欠くセレッソは序盤の攻撃に全てを注ぎ込んできた。まず1点もぎ取れば、ジェフも慌てるに違いない。そんな意図が見え隠れする集中した立ち上がりだった。運動量も十分で、当たりも激しい。前回の対戦の前半戦にも匹敵する出来であったとも思う。
しかし、この日のジェフにはそれをも物ともしない運動量と連動性があった。よほど監督にハッパをかけられたのか、選手達の動きが良い。浦和戦に匹敵するくらいだ。違いがあるとすれば、浦和の良さを潰そうとした攻撃的な守備ではなく、それよりももっと自らが主導権を握って自分達の意図で攻撃を組み立てていること。ボールを持つ選手へのフォローが的確で、尚且つピッチを大胆に広く使えている。ワンタッチパスが連続して、次々に前線に選手が駆け込んでいく。
その中心に、クルプニコビッチが居た。連携が深まると、彼はこうも変わるのか。彼を起点にして、次々に両翼へ活きたボールが送り込まれていく。そして、最前線のハースとの連携も確実に良くなっている。クルプニのタクトに、セレッソがついていけなくなっていくのが分かった。10分が経たないうちに、中盤を完全に制圧する事に成功した。
先制点も時間の問題だと思い始めた12分。
ショートコーナーから、羽生が上げたボールを中央で水本が折り返し、そして待っていた山岸へ!前節に続き、絶好調ぶりを見せつけるボレーで早々に先制点を奪ってみせる。この1点はセレッソにとってキツかっただろう、怯んだセレッソにさらに追い討ちをかけるべく攻め立てる。
23分には山岸からのロングボールを、ハースが柳本と競り合いながらループでゴール。
さらに、27分にはCKを水本が頭で流したところに合わせたハースのヘッドで3-0。
完全に勝負を決め、セレッソに止めを刺した。
この3点目を奪ったあたりまでは、非常に集中していた。
阿部も至るところに現れては、守備の綻びをつくろい、坂本や勇人・羽生も堅実に中盤を支えていた。ただ、さすがに3-0となると集中力が少し緩んだのか、柿本のヘディングを決められてしまう。3-1での折り返しとなった。
後半、さらに攻め立てるジェフ。
15分くらいまでの間は、山岸・勇人らが次々に決定的なシュートを放って、ゴールを脅かすものの、決めきれない。流れはジェフだったが、そう言うチャンスを決めないと得てして反撃を食らうもの。少しずつ、セレッソがカウンターでペースを握り始める。何とか1点でも返して、ここフクアリまで来たセレッソサポーターに応えたいそう言う気持ちが彼らを突き動かしたのだろう、これだけ不利な状況でももがいたセレッソの気迫に押されたのか、古橋シュートがジェフのDFに当たってコースが変わり、ゴールとなる。
でも、ただそれだけだった。力の差は歴然だった。
残り時間、スタミナの切れたセレッソに交代で入った工藤・楽山・中島らが襲い掛かる。まさに残り15分はサンドバック。再三再四、本当に5~6点獲ってもおかしくないほどの猛攻で、決定機の山を作って見せる。ただ、大勝している余裕なのか、どうにもお洒落なプレーが目立って来てしまう。ゴール前で余計なボール回しが多くなり、浩平は精度の無いループでゴールを捕らえられない。
山岸の反転シュートも、勇人のミドルも、阿部の折り返しも、とにかく点になってくれない。ベンチで仰け反る監督の姿が何度も目に入ってくる。決定力と言う意味では、大きな課題を残してしまった感じもしたが、とにもかくにも、攻め抜いて押し切って、セレッソを粉砕して見せた。
心強いハースの復活。山岸の覚醒。
妥協を許さない阿部のキャプテンシー。
そして、全員が見せた高いレベルでの連携。
2-7-1を機能させて見せた。
収穫の多い、ここで中断に入るのが惜しいほどの試合だった。
いままでのジェフだったら、気を抜いて負けていたかも知れない試合で、これほどの集中力をもって試合へと送り込んだのは、やはり監督の手腕だろう。「強さ」を感じる試合だった。2試合勝って準決勝に進む事は、自信を得る意味でも非常に大きい。
中断が明ければ、また厳しい日程の試合が続く。
ただ、ここに巻が戻ってきた時にどうなるのか、そんな期待の方が大きい。リーグも、ナビスコも、これからが佳境。何かが成し遂げられるんじゃないか、弛緩を断ち切ったこの試合で、また一歩このチームは強くなった。
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