6/4(日)・ナビスコ杯準々決勝(1)・セレッソ大阪戦
- 2006.06.07
- GAME REPORT
「去年の鳥取の借りを返した」
「大久保のハットの借りは返した」
まぁ、そんなこんなで長居にもセレッソにも良い思い出はあまりない。去年は全部負けたし、古くは主審・原田に9人にされたのもここ長居だったか。終わってみれば、5-2の大勝。ハースの来日初ハットトリックと、さぞや良い試合だったと観ていない人なら思うだろう。が、そんな試合じゃない。負けゲームに近い内容をひっくり返す事が出来たのは、個々の選手の意識の統一と、監督の采配の妙だった。
ナビスコ杯の準々決勝第一戦。
リーグ戦で最下位に沈むセレッソのホーム・長居。5万人が入るワールドカップ仕様のスタジアムは、この試合には大き過ぎたようだ。セレッソもジェフもサポはさほど多くない。ジェフサポは2~300人ほどだったか。少し前のアウェイ戦を思い出して貰えれば雰囲気が分かるんじゃないだろうか。ごく最近でこそアウェイにもそれなりに多くのサポーターが訪れるようになったけれども、少し前のアウェイは今日みたいに少数精鋭が当たり前だった。・・・まー、たいてい良い気分では帰って来れなかったもんだが。
しかし・・・それにしてもずいぶんと暑い。
人が少ない分、風通しが良いから助かっているものの、カキ氷が欲しくなる陽気。やっぱり晴れれば夏も近い6月と言う感じがする。さらにピッチは暑いのだろう、芝の半分に日が当たって緑が鮮やかだ。この暑さに、これは消耗戦になるなと思った。
メンバーは予想通り、巻以外はベストメンバー。
GKはクッシー。ナビスコは彼に任せきるつもりのようだ。
----10----
--09--22--
16------02
--06--07--
-03-05-04-
----17----
ハースの1トップに不安が無いわけじゃないが、巻が居ないだけでチームが変わっていたらジェフじゃない。先手必勝、一気呵成の攻撃に期待するが、セレッソも大分この試合に対策を練っていると言う前情報通り、事はそう簡単に行かなかった。セレッソの出足が予想以上に良く、主導権を握る事が出来ない。運動量豊富に次から次へと後ろの駒が飛び出してくる動きは、まるで良い時のジェフのよう。さらに最前線に構えて、柔軟にサイドへも流れて起点になる西澤がこの上なく厄介。10分経っても、全くジェフペースに持ち込めない。攻撃は、散発的なカウンターだけに封じ込められてしまった。
攻撃がシュートで終わるセレッソ。
その攻撃が徐々に精度を増していく。劣勢を打開しようと攻撃的になる山岸。オーバーラップで血路を開こうとするイリアン。その裏を、待っていましたとばかりに西澤・古橋・森島が連動して突く。ヤバイなと思い始めた矢先、左深くに流れる西澤からの折り返しに、ピンゴがドンピシャで合わせて先制する。最悪の展開だ。
攻撃に転じても、一旦食い止められると、そのルーズボールが拾えない。波状攻撃が出来ずに、一進一退の攻防になる。そして、どうしてもシュートを撃つセレッソの方が優勢に映ってしまう。
ただ、劣勢ではあってもさほど攻撃が悪かった訳ではない。
シュートは撃てなくとも、その直前までは攻め込む事が出来ている。我慢の展開になるかと思った矢先、右の敵陣深くでボールを受けた勇人がシュート。GKに弾かれるものの、そのこぼれをハースに折り返してヘディングシュート。早い段階で同点にする事に成功する。
ここで、何とか1点を取れたことは大きかった。その後、互いにGKまで抜かれる決定機を迎えるものの、集中してゴールを割らせない。
それにしても、セレッソの動きが見事だ。
以前は見られなかった連携は、確実にジェフの守備陣のマークを混乱させてギャップを生んでいる。フィジカルも強い。いい時のセレッソ、去年のセレッソのようだ。厄介な時に当たったもんだ。前半の劣勢の象徴が、西澤vs大輔のマッチアップ。ボールを貰うまで、貰った後の選択肢が多い。大輔じゃ荷が重いとさえ思ってしまうほど。相変わらず、国内で数少ない、雰囲気のあるストライカーだ。
最前線で基点を作られた事で、全体がどうしても下げられてしまう。反対に、前半のハースは、1点獲ったものの、ごっつぁんゴールであまり目立ちはしなかった。そう、前半までは。
後半、全体の流れを大きく左右する判定が起こる。
前半から再三再四やりあっていた、西澤と大輔。鬱陶しく思ったのか、西澤がいきなり大輔に右ストレートをかます。しかも、真後ろに審判。問答無用で、一発レッド。「ワナにはまった」とは西澤談だが、アウェイのゴール裏からも殴ったとわかるようなプレーは、さすがに自分をコントロールできていないと言われても仕方ないだろう。
西澤の自滅で、ジェフは当然攻勢に出る。
ここからが、オシム監督の用兵の真骨頂だった。ジェフは、複数のポジションをこなせる選手が何人もいる。状況の変化に応じて、監督が動いた。まず、1人少ない相手に3バックは無用と、水本を水野に代えてさらなる攻勢に出る。この交代で、坂本がストッパーに下がった。
----10----
--09--22--
16------08
--06--07--
-03-05-02-
----17----
CKを立て続けに奪って、攻め立てるジェフ。
さらには、水本・イリアンまでもが前線に飛び出して勝ち越しを狙う。
ところが、セレッソの一発の反攻を得点に結ばれてしまう。古橋の反転を大輔が引っ掛けたとして、2枚目のイエローで退場。さらにPK。松尾主審の帳尻あわせとも言える判定で、10対10で1-2。この時点で数字上の劣勢に立たされた。
大輔の退場で、布陣は下のように変わる。
相手も10人、マークのズレは無い。
----10----
--09--22--
16------08
--06--07--
--05--02--
----17----
前半の良い流れが頭に残っているセレッソは、ここで2-1の勝利ではなく、3-1、4-1へとすることでトドメを刺すことを狙っていたのだろう。試合後、セレッソの下村もそうしたコメントを残している。
ところが、前がかりになりかけたセレッソを突如目覚めたハースが強襲する。
あっという間に、2-2の同点。これで、セレッソは「攻めるべきか」「守るべきか」チーム内の意思統一が図れなくなった。
ここに、オシム監督の一手が打ち込まれる。
クルプニに代えて、楽山。
--16--10--
----22----
23------08
--06--07--
--05--02--
----17----
突破力と得点力のある、元FWの山岸を最前線に上げる2トップへの布陣変更。
これで、完全にセレッソのマークがおかしくなった。
マークの確認をする間もなく、柳本がセレッソにとって致命的なバックパスミス。これを拾ったハースが、ものの1分前にFWに上がった山岸へボールを折り返して逆転。2-3。さらに間髪を入れずに山岸が左から抜け出して、ゴールネット天井に突き刺すダメ押し弾。
後はもう、混乱して気持ちも萎えたセレッソ相手にやりたい放題だった。
加えて、日陰になってきたとは言え、相変わらず暑い。休養十分のジェフとの運動量の差は、ますます鮮明になっていった。
ハースが裏に抜け出して2発外し、晃樹も右の遠目から強烈なミドルシュート。抜け出したイリアンも、相手GKに当ててしまい・・・と。普段だったら、戦犯に仕立てられても仕方ないシュートミスのオンパレードながら、最後にハースが途中出場の中島のクロスをヘッドで決めてハットトリック(&2アシスト)を達成して“締め”。
5-2、アウェイで苦手のセレッソ、前半の出来を考えれば上々の結果で試合を終えることが出来た。
--16--10--
----07----
23------08
--06--15--
--05--02--
----17----
最終的な布陣はこう言う形だった。
中島と勇人の位置が逆かも知れないが、二人ともどちらのポジションもこなせるので問題は無い。
冴えた監督の交代策。
振り返ると、状況の変化に対応出来るように、この4年間に積み重ねられたものが、とりわけ活かされた試合だったと思う。退場、交代とで次々に持ち場が変わりながらも、特に違和感無く淡々とこなす事が出来たのはジェフの底力だ。
特に際立ったのは、FWにチェンジした後の山岸。元々中学までは、同年代でも飛びぬけた実力を持ったFWだった。控えめで「俺が、俺が」と言う性格では無かったので、いろんなポジションを試されて今に至るわけだが、本来持ち合わせていた得点感覚が一気に開花してきた。ここ数試合で、試合を決める働きをしているし、今後も試合途中からのFW起用は林無き後の貴重なギアチェンジの手段になるだろう。
そして、交代策とは別に3得点2アシストのハースに触れない訳にはいかない。
正直、今日も出だしはイマイチだったが、得点を機に尻上がりに調子を上げていった。実際、もっと決めなくてはいけないチャンスもあったのだから、ごっつあんゴールでばかり喜んでもいられないのだが、乗せるといろんな意味で怖い選手なので、気分を良くする事が出来て何よりだ。この人の場合、いかに気分良くプレーさせられるかが問題なんだよな。
さて、この結果で準決勝進出はかなり濃厚にはなった。
アウェイゴール2倍ルールのおかげで、0-3で負けても良いと言うのは事実だ。けれども、準決勝に進出した訳ではない。実際、ナビスコの広島戦のように45分間だけで3失点するようなゲームだってある。その教訓があるのだから、残り90分も集中して勝って勝ち抜かなくてはならない。
木曜日のフクアリに来るサポと言うのは、それだけの内容と結果を求めているからスタジアムに足を運ぶはずだ。それに応えるだけの、締まった試合を。
それに、昨年の借りはまだ返しきっていない。
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