5/6(土)・第12節・横浜Fマリノス戦
- 2006.05.07
- GAME REPORT
浦和戦の快勝から3日、敵は自らの気の緩みとばかり思っていたが、それ以上に選手たちの体を蝕んだ疲労の影響は大きかったようだ。浦和戦のような、素晴らしい試合も出来る。けれども、それを毎試合続ける事は難しい。ならば、自分達のサッカーが出来ない試合をどうやってしのぎ、自分達のサッカーで戦える試合の回数をどうやって増やし、34試合のリーグ戦をどう戦い抜くかが優勝するチームと、出来ないチームの差になる訳だが・・・その意味で、今日はしのぎきりたい試合だった。
南風が強く吹き付ける日産スタジアム。
試合前から、報道は巻・巻・巻・・・巻一色だった。浦和戦でアピールに成功し、この日地上波中継するTBSは「巻カメラ」まで設置すると言う。その喧騒に誘われたのか、アウェイ側には、連休中とは言え人・人・人。およそジェフ戦とは思えないくらいの多くの人が観戦に訪れ、1階席がほぼ満員に埋め尽くされてしまった。
曰く「フクアリのゴール裏をそのまま持ってきた」ような状態。代表を目指す、阿部・巻の最後のアピールの場、オシム監督65歳の誕生日と、テンションは高かった。
サポーターは、当然、浦和戦の再現のようなゲームを期待する。しかし、キックオフから間もなく、それが難しい事が判ってしまう。
ジェフの生命線である運動量が目に見えて少ない。サボっている訳ではなく、単純に動かない。前日に見た練習では軽やかにも見えたのだが、相手がいる試合では、そうも行かなかったようだ。鈍った動き、ぶれたパスを横浜に狙われ、前線の大島めがけ、サイドのハユマめがけて散らされる。
いきなりの危ないチャンスが数本。
いつも90分間良いわけじゃない、時間が経てば流れが取り戻せる。そう思いながらも、なかなかその時間帯はやってこない。浦和戦では上手く機能した巻の1トップも、松田・中澤をはじめ、那須・河合も含めた180cmオーバーの守備陣に囲まれてまともに機能しない。そうなると、ボールの収めどころはクルプニになるのだが、前日練習を回避していたように、いかにも身体が重い。そうなると、羽生の動きも攻撃面で活きて来ない。
囲まれ、ボールを奪われ、何とかDFが身体を張ってコーナーに逃げ込む。セットプレーでは、中澤も参加して空中戦で不利を強いられる。横浜らしい、現実的なサッカー。迷いが無く、勝利への最短距離で力強かった。
正直、このクルプニの出来ならば、ハースを使って欲しかった気もする。
良い流れの時は変えないと言うことなのか、それとも見た目以上に先発で使えないコンディションなのかは解らないが、結局ハースには声がかからないままだった。
劣勢の中、先制点は突然訪れた。
左からのクロスを羽生が中央へ送り込むと、そこに待っていたのは智!目の覚めるようなジャンピングボレーで豪快に横浜ゴールを突き破った。
試合展開云々が関係ない、豪快な一撃。これ以上ない“祝砲”だった。
この一撃が試合の流れそのものも変えてくれれば良かったのだが、残念ながら横浜はそんな事で動じるようなチームでは無かった。むしろ、吹き付ける南風によってぐんぐんと上がった気温に、ジェフの足はますます止まっていくばかりだった。
大島のヘディングがサイドネットをかすめ、清水や吉田の動き出しを封じきる事が出来ない。身体さえ動けばと言うもどかしい展開。
1-0でハーフタイムに入ったときには、「ようやく」と言う言葉が相応しかった。
疲労感を感じさせる重い足取りで引き上げる選手たち。打開のためには、何か変化が必要だったが、リザーブメンバーに動きは無いままだった。
しばらくして、前半と同じメンバーがグラウンドに戻ってくる。櫛野が一人一人を激励して出迎える。45分の残り時間が長く感じた。
後半も、劣勢の展開が続く。シュートすら撃つ事が出来ない。
横浜は、疲れの見えた選手を次々と交代し、活性化を図っていく。のこり30分のところで、ついに久保を投入。さらに山瀬幸、ハーフナーと若手を投入する。時間の経過と共に、横浜の狙いがロングボールを最前線の選手に当てる、放り込み戦術になっていくのがわかる。
対するジェフは、クルプニに代えて中島を投下するものの、試合の趨勢にはほとんど影響なし。攻め込んでくる横浜にカウンターをあてるものの、どうしてもシュートにまで持っていけない。羽生→巻の決定的シーンも、巻にボールが渡る前に中澤がクリア。巻の局地戦は、残念ながら完敗だった。
そして残り5分を切ったところ、DFの集中が一瞬途切れたのか、ファーのハーフナーをフリーにしてしまう。194cmの高さからのヘディングを立石が何とかはじき出す。ボールは、ラインを割ったように後のビデオで見えたが、プレーオンでハーフナー→清水と繋がれて失点。そこからお互いに1点を取る為の打開策無く、ドロー決着となった。
判定に泣かされた部分があるとは言え、ゲーム全体としては横浜のゲームだったと言える。
如何せん動けなかった。身体も、ベンチも。
逃げ切れれば、今日の出来としては十分だったが。そうさせてくれなかったのは、横浜の戦術の徹底の賜物と言えるだろう。シンプルだが、現実的。それで勝ち点を積み重ねるのもまたサッカーだ。
試合後、オシム監督は長時間アマルコーチらと熱論。
勝ちきれなかったチームの戦いを、どう語っていたのだろうか?
65歳の誕生日を迎えたオシム監督。スタンドからの大きなコールに、手を振って応えた。いつまでもジェフの監督であって欲しい。けれども、いつまでも頼る事が出来ないのは皆分かっている。残された時間はあまり多く無いだろう。
リーグ戦は中断に入るが、選手・サポーターはこの引き分けの重みをしっかりと受け止めて、また前を向いて行かなくてはならない。
『(自分の誕生日よりも)ここまで選手たちがすごく頑張っていいプレーをして、勝利を重ねてきてくれたことのほうがうれしい。』
同じように、多くのサポーターがスタジアムを埋め、監督とその愛弟子達が描くサッカーを心から楽しむ、そう言う街を作っていく事が監督へ何よりもの報いになるはずだ。下を向いている暇は無い。12試合、3分の1が終わっただけだ。まだ、勝負はこれからだ。
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