4/22(土)・第9節・ジュビロ磐田
- 2006.04.23
- GAME REPORT
「あれは終わった話だ」
「いや、終わってなんかいない」
この試合に臨む気持ちがまとまらないまま、迎えてしまってはいなかっただろうか?去年のような、悔しさがブーイングの刃になっていた事も無い。憎たらしいほどの強さを纏っていた磐田への、反骨の精神もまた無い。スタジアムを包む空気が、同じ方向を向いていない、特別でない試合のようだった。
『風化』いや『消化』と言うべきだろうか、この一戦に望むサポーター個々の捉え方は、大きく変容していたようだ。
それでも試合は始まる。
イリアンの不在は大きな穴をチームに開けていた。大方の予想は前田の1トップに対して、2バックで臨むと言うものだったが、実際は中島浩司をリベロ的に配置する3バックシステムとなった。前田には大輔がマークに付き、もう一人のストッパー・水本は、相手の左・村井を押さえにかかる。昨年の対戦で2アシストを決められた村井。オシム監督も警戒をしてきたか。
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磐田の布陣は、欠場も噂された菊地が先発。
その菊地が穴を埋めたファブリッシオが欠場の他は、ほぼベスト。ベンチには中山・名波といったベテラン勢が控える。
試合は、激しい主導権の握り合いになった。
どちらかと言うと押しているのは磐田。ジェフは本来ならばイリアンの穴を埋めるため、全体が前に出てプレッシャーをかけていかなくてはならなかったが、悪い時は中島のカバーをする為に全体が意識を後ろに持ってきてしまう。今日は、その悪いジェフが出た。
磐田の攻撃の中心は、前節2得点1アシストを決めた太田。
予想を通り、右WBに限定されずにあちこちに顔を出してくる。必ずスピードに乗って勝負を仕掛けてくるから、厄介なことこの上ない。こういう姿勢は、ジェフの選手にも欲しいところ。中島が対応しなくてはならないシーンは、明らかにミスマッチで、何度も「やられた」と思わせられた。この太田のせいで、シュートは少なくても劣勢に思えてしまう。
しかし、それ以外の選手は大体押さえ込んでいた。
もう一人のキーマン・村井は、水本が密着マークで動きを封じ、前線で起点になるべき前田は、まだコンディションが整わないのか、目立った働きが出来ない。守備が持ちこたえる間に、間延びした布陣を押し上げ、徐々に反撃に転じていく。
反撃の中心になったのは、阿部・巻の代表組。とりわけ、この試合は代表のジーコ監督が観戦していただけに、目に見える活躍して代表へのアピールをしたいところ。特に巻は、前節2得点1アシストを決め、調子も乗りに乗っている。チーム全体が、この二人に何とかして点を取らせようと言う空気を持っていた。自然に、ボールが集まっていく。
そして、巻には何度か良い形でボールが入っていたが、この日はそれが悉くファウルとされてしまう。競り合っても競り合っても。ペースを掴めず、苛立ちの募る巻。羽生へのアシストかと思われたパスは、オフサイドと判定され、それならばと智の左からの突破に飛び込むが、触る事が出来ない。
阿部のFKも壁。攻め手を失ったまま、前半は徐々に膠着して終わっていった。
どうにも流れが悪い。
選手から必死さは伝わるのだが、どうも普段通りにいかない。磐田にやられていると言うより、身体が重くて動かないような違和感。イリアンの存在を、殊更に大きく感じてしまう。
後半、とにかく先制点を!
そう思ってゲームに入ったものの、流れは大きくは変わらない。むしろ、前半は攻められこそすれ、シュートは撃たれていなかったが、後半はシュートで終わられてしまう。決定的なピンチもあったが、立石が何とか止めたり、相手が外してくれたりで、失点までは至らない。
相変わらず前線では、巻が苦心。その周りを、羽生がクルプニがフォローに入るものの、肝心なところでパスが通らずにカットされる。勇人のシュートも枠外。徐々に双方の中盤のプレッシングがルーズになり、「攻め合い」の様相を呈しはじめる。
磐田は相変わらず、太田が厄介。
その太田が創ったスペースを埋めてくる成岡も厄介。技術はそこそこ、それをスピードに乗った状態で駆使しているから、どうしても後手になる瞬間がある。少しずつ劣勢を感じ始めた。
こう言うとき、切り札が居れば・・・そう思っても、まだ切り札は生まれていない。
ある中で何とかしなくてはならない。監督も、いまベストと思われる布陣を崩したくは無かったのだろう。交代は残り時間も少なくなってからだった。楽山が投入され、左翼から中に切れ込んでシュートを狙ういつものプレーだ。1回目は失敗。そして、2回目は完全にコースが空いたのだが、不発。ゴール裏からため息が漏れる。
磐田も、中山・名波を相次いで投入して反撃。
中山のとにかくドコからでも撃って来る泥臭いシュートが、福西のジャンピングボレーが、立石を強襲する。けれども、紙一重で何とか耐える。心臓に悪いったらありゃしない。残り数分は、両チームの総力を賭けた攻撃の応酬。ジェフも、羽生が水本が後一歩のところまで攻め込むが、決定打が打てない。
そして、そのままスコアレスドローで試合を終えてしまった。
最後の決定機の質を思い出すと、負けなくて良かった、そんな内容ではあったが・・・磐田相手にホームでこの不完全燃焼感・・・去年の出来事が「終わったこと」には思えない自分には、どうにも悔しくて仕方の無いゲームとなってしまった。磐田を叩く事でこそ、より勢いをつけて戦えると思っていたのだが・・・。
磐田は盛り返しつつある。
戦術よりも、「個」の芽吹きが著しい。今までとは違う「強さ」を認識しなくてはならないだろう。これが、太田をはじめ、選手が欠けた時に出来るのかは分からないが、斜陽のチームと切り捨てるのは危険だ。
『ただ、ジュビロがいいチームになるということに疑いはない。以前のジュビロのようなエレガントなプレーはしないかもしれないが、ガツガツいくような強いチームにはなるのではないか。ただし、忍耐は必要だろう。』
去年の対戦の後の、監督の言葉が妙に頭に響いた。
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