3/21(火)・第4節・清水エスパルス戦

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「今日勝たないとね、ズルズルいっちゃうよ」
試合前の、サポ同士の会話。

「首にナイフを突きつけられた、ギリギリの状態だった」
試合後の、オシム監督。


言葉は違えど、この試合を向かえるにあたる関係者の気持ちは一緒だった。3試合勝てなかった。それも、勝たなくてはいけないと開幕前に思っていた相手ばかりだった。去年と同じメンバーで戦える安堵があったし、去年と同じように戦えば、去年と同じように勝てると思っていた。

慢心。
いくら、身体を痛めつけて練習をしても、心が緩んでいたら力は出ない。勝てない中で、このチームを支えてきた自信が本当に脆く揺らぎつつあった。このまま崩れるのか、立ち直るのか、その瀬戸際の一戦だった。


日本平。
あまり良い思い出の無いスタジアム。食べ物が良くても、胃もたれを起こすような、およそサッカー場とは思えない脂っこい場内アナウンスと、妙なハイテンション。どうにもテンポが乱される、自分には嫌な場所だ。
山の上にあるスタジアムだけに、天候の影響は受け易い。昔は落雷による停電もあったし、今日は強風がアウェイ側へ向けて吹き付けている。

調子が悪い時ほど、声を出したくなるのがサポーター。後援会バスも三台、ゴール裏はかなり黄色く染まっていた。いつもより長いアップの間、ひたすらに声を出し続けて選手を鼓舞した。

--10--18--
----09----
16------02
--06--07--
-03-05-24-
----01----


スタメンは、相手が2トップと言う事もあって、3-5-2の基本布陣に戻された。
トップ下には、羽生ではなく、クルプニ。羽生ほど動けないクルプニの起用、これがどう出るか。
3連勝を狙う清水は、連勝中のベスト布陣。マルキが怖い。古巣との対戦に闘志をたぎらせているかのようだった。兵働・藤本をはじめ、若手が多くなって別チームのようになり、なかなか展開は読みづらい。

ゲームはいきなり、つばぜり合いの様相になった。
キックオフから一気に攻め込む清水。ゴール前で、選手がクロスするかのように左右に流れて、機先を制してシュートを放つ。精度無く、事なきを得たが危ないアタックだ。これを受けて、ジェフも反撃に移る。ボールをためられるハース、ハイボールを制する事が出来る巻、キープして捌けるクルプニ。基点の作り方はいくつもある。清水のサイドアタックを早めに潰すや、カウンターを食らわす。
そんな中、左中央のクルプニ→ハースの右クロス→巻のドンピシャヘッド!と言う流れるような攻撃が生まれる。相手の腕を折りそうなくらい強烈なヘッドだったが、これは相手GK西部に片手一本で阻まれてしまう。大きなため息。

だが、この一撃を足がかりに、徐々に全体のペースとしてはジェフが握り始めた。
清水のサイドアタックがなりを潜め、厄介なのは兵働・藤本のポジションを問わないアタックと、やたらヤル気のマルキに限られてくる。ただ、完全に振り切られる場面は少なく、対応は出来ていた。
逆にジェフは、やや遠目からハースや智が狙い、シュートで終わる攻撃をする。
逆風だったが、ボールを組み立てる展開だったので、不利に働いたとは思わない。

そんな中、阿部がゴール前に一気に進出。ゴール前でもつれて、倒れて・・・PK?
遠目に見ていたが、まだ阿部のボールで無かったし、正直これは誤審では?ダイブでイエロー獲られるかと思ったほど。これを決めて1-0、なんかスッキリしない。
審判は「東城」・・・知らん・・・?初心者マークか?
なんかイヤな空気で居ると、今度はウチのゴール前で智がマルキを倒してPK。これ、さっきのPK無かったら、無かったのでは?決めて、1-1。全然スッキリしない。審判変えろ!第4審は誰だ!?と、見てみれば「西村」・・・イヤ、あんたも結構です。前門の虎、後門の狼か(泣)
不安定なジャッジは続き、仕方なく「そういうもんだ」と割り切って観る事とする。

ジェフの攻撃は、どうしても羽生が居る事を前提としたような動きになっている。クルプニも頑張って動いているが、羽生ほどには動かない。だから、皆が動かないとスペースは出来ない。バックパスで、パスの出しどころを探すが、見つからない。そういえば、いつの間にか、スペースメイキングは羽生頼みになっていなかったか?
もちろん良い攻撃もあるが、微妙に合わない。ただ、それは連携の問題。時間が経てば良くなるはずだ。

逆に気になる選手が居る。阿部だ。
簡単にパスをミスる。ボールを取られる。決定的にヤバい場面で。全くらしくない。犬のチームのキャプテンなのに、まるで猫がヒゲを失ったかのように、バランスが悪い。どうしたんだ?積み重なった疲れ、細かい怪我、それを抱えながら責任感で動いている阿部。こういう時は、周りが補わなくては。

前半は、このまま終了。
悪くはない。ただ、決め手に欠ける。思った以上に、清水のポジションチェンジが激しく、掴み所が難しい。去年対戦したときよりも、はるかに組織されている。それでも、今年は11人で戦えている。ペースは、ジェフに来ている。

そして、後半になっても、概ねペースはジェフだった。
風上に立ち、流れるボールの扱いに苦心するものの、チャンスの数が増えてくる。右でフリーになったクルプニのシュートは、GK西部の正面。さらにクルプニとの交代で羽生が投入された後は、テンポが一段と速くなった。

右クロスからハースがドンピシャで飛び込むも、サイドネット。
さらに勇人が右からボレーでシュートを放つも、GK正面。
そうした紙一重攻撃のシーンから、一転してカウンターでの反転攻勢を仕掛けられる。ジェフ陣内でのFKも増え、セットプレーから失点するここ3試合の嫌な光景がアタマを過ぎった。しかし、この日は気持ちの入り方が違っていた。不恰好でも、身体ごと投げ出して守ろうとする気持ちが、随所で伝わって来る。転がり、競り合いながら、最後の一線を割らせずに、ボールを蹴りだす。

1-1のまま時間は過ぎていき、また清水のFK。
蹴るのは藤本。ジェフは、コーキと羽生を残して全員守備。またも嫌な空気が流れたが、これは壁に当たって事無きを得る。跳ね返って来たボールを藤本が、伊東テルに戻そうとバックパス・・・ところが、これが逆球になって体勢を崩したテルが転倒。詰めていた羽生が、ハーフェーライン手前から奪い去って、一気のドリブルを開始する。清水陣内には、GKしかいない。遥か向こうから駆け上がってくる羽生に絶叫しながら、祈るような気持ちでドリブル、そしてループシュートの行方を見守った。
日本平の二階からは、正直、ゴールまでが良く見えない。周りの絶叫を聞いて、シュートが決まった事を知った。2-1。けれども、まだ試合は終わっていない。「集中しろ、まだ終わってないぞ!」と誰彼ともなく叫ぶ。

どんな格好でもいい。とにかく今日は勝ちたかった。
羽生が、勇人が、巻が、なりふり構わずにボールキープに入る。巻は、身体を蹴られても這いつくばってボールを守り、蹴った相手の方が気圧されて倒れこむ程だった。ロスタイムの3分は、そうしている間にようやく終わった。今季初、久しぶりの勝利に喜びよりも安堵の気持ちが沸いて来る。
ホッとした表情で、仲間同士と、握手を交わした。



結局この試合に限れば、清水とウチの差はほとんど無く、「勝ちたい」気持ちの差だけだったと言える。逆を返せば、ウチはその部分を全面に出す事が出来なければ、勝てないチーム力しか持ち合わせていないとも言える。去年は、それがより多くの試合で出来たと言う事だろう。
泥臭く「勝ちたい」気持ちを取り戻すまで時間がかかったし、監督が言うように「首にナイフを突きつけられた、ギリギリの状態」まで追い詰められなければ力を発揮できないのでは、タイトルなんて夢のまた夢だ。解ってはいても、気は緩む。それをどう抑え込んで、結果に結び付けていくか。
勝てた事で振り払った重圧を、今度は力に変えて。迎える強敵・鹿島は絶好の試金石になるだろう。

それにしても、日本平からの帰り道が短く感じた。
結果が違ったら、えらく長い帰り道だったんだろう。。。