掴み取ったラストワンプレー 2025 J2第6節・ ヴァンフォーレ甲府戦

掴み取ったラストワンプレー 2025 J2第6節・ ヴァンフォーレ甲府戦

2025/3/23(日)14:00
JITリサイクルインクスタジアム
J2第6節
甲府 1(1-0,0-2)2 千葉

<得点>
1分 甲府 OG
58分 千葉 20石川(PK(14椿が倒されて得たもの)
90+4分 千葉 25安井(CKからの流れ。ゴール前、こぼれ球を押し込む)

千葉公式
甲府公式
Jリーグ公式

昨年、ATにウタカに決められ、勝点2を落とした小瀬。
苦しい試合の最後に、今年は歓喜が待っていた。

小林監督の言葉通り、クラブの持てる力を全て出し切らないと勝てないのが、J2リーグ。毎試合、そのギリギリを出して、一戦、一戦、紙一重を積み重ねて来た。

その張り詰めた糸を切らしてしまう事への恐れがある。
ピッチも、スタンドも、「やり切らなくては」と言う必死さがある。
だから、この試合に向けての緩みは無かった。

迎えたアウェイ甲府。またも難敵。
なかなか結果が出ていないだけに、このホームの一戦に賭けるものは大きい。
しかも今回は、季節外れの暑さと、強風が、試合を更に難しくした。

スタメン。
田中の名前が無い。代役は岩井が初先発、。
GKはこの日もスアレス。
ベンチには、前も戻って来た。

前半。ジェフは風下。

開始1分経たずに試合が動く。
ボールを奪われ、左へと展開されると、荒木のクロスが鳥海の頭に当たってコースが微妙に変わり、サイドネットに。風の影響もあったかも知れない。慎重に入ったはずの立ち上がりで、いきなりのビハインドを強いられる。

さらに、4分にもCKからあわやと言うシュートを打たれたが、ミスに助けられた。
2点差になっていたら、去年の最終戦・山形のような展開になってしまっていたかもしれない。

反撃に出たいところだったが、甲府の圧力と強風でなかなか攻撃の形が作れない。
ボールが風に押し戻され、なかなか思うようなスペースへ供給する事が出来ない。
田中が不在で、右のスペースもボールの受け方が違う。

最終ラインからのビルドアップには甲府の寄せが早く、そこからの展開に対しても同様。
球際での競り合いは甲府が優勢で、ボールを奪われたり、ミスパスで攻守が入れ替わったり、なかなか甲府のゴールに迫る事が出来ない。

反対に、甲府の蹴るボールは大きく伸びて、スペースに走られる。
ビルドアップでも、こちらのボランチの裏を徹底して狙ってきた。
攻撃に重きを置いた、横山、品田の組み合わせだけに、前を向けない時は守備の脆さが表に出てしまう。品田がボールを持った時に、強く当たって奪いに行く狙いが見て取れた。

前半は、呉屋が自陣から単独カウンターでシュートまで持って行ったシーンぐらいが攻撃の見せ場で、ボールは持ちながらも、持たされている感じで、我慢が必要な、難しい戦いを強いられていた。

後半。
またいきなり強烈な一撃を浴びる。
ジェフの左サイドでボールを奪われ、平塚が強烈な左足ミドルシュートを放つも、クロスバー。ここもまた、まだ運があると思わせるシーンだった。

風上になり、徐々に椿が走れるようになるが決め手がない。
監督は、早めにカードを切る。

56分、岩井→杉山。呉屋→カルリーニョス・ジュニオ。
初先発の岩井は、今日はなかなか持ち味を出し切れず。
交代で入った杉山は、今季初出場。

すると、この直後の58分に、杉山のパスに椿が抜け出して倒され、PKを獲得。
わかっていても止められない。
キッカーは、直後からボールを離さなかった石川。
その姿に、ストライカーとしての、ジェフの新たなエースとしての自覚と拘りを強く感じる。これを、左下に決めて同点。

ボールを掴み、すぐにセンターサークルに戻る。
アウェイとはいえ、同点では決して終わらないという強い気持ちがスタンドまで伝わって来る。

ジェフは椿の突破を武器に逆転弾を狙う。
ホームの甲府も一層攻勢を強め、攻め上がった両翼の裏を衝いてくる。
双方ゴール前のシーンが増え、攻守の切り替えが目まぐるしい。

すると、71分、椿に代えて横山。
攻撃の核を担っていた椿を下げたのは意外だった。
安井はボランチに入り、横山が左サイドへ移る。

78分、横山のスルーパスにカルリーニョスが抜け出しかけるもブロックに遭う。
さらに84分は、左サイドで石川とパス交換をしたカルリーニョスが右足を振り抜くも、強烈なミドルは、甲府GK河田のスーパーセーブに遭ってしまう。

試合時間も残り少なくなり、89分に日高→前、横山→吉田。
ATは4分。

93分、ジェフは吉田が身体を張ってCKを取得。
キッカーは品田。一度は弾かれるものの、もう一度拾ってクロスを挙げる。カルリーニョスのヘッドはポストに当たるも、もう一度押し込み、またキーパーに弾かれ。最後は安井がゴールに押し込んだ。

劇的なゴールに、ベンチの選手たちまでもが安井に駆け寄る。
もみくちゃにされる安井、お祭り騒ぎのスタンド、なぜかベンチの輪に加わっている品田。その最中に試合終了の笛が鳴った。
まさにラストプレー、ジェフ三唱は、笛の後だった。


(試合終了直後、歓喜に沸くゴール裏)


(ゴール裏、バックスタンド、メインも合わせて約2,000人のジェフサポが小瀬に来場)

どちらに転んでもおかしくないゲーム、と言うよりも甲府の方に正直、分があった。
前後半にあった、決定的なチャンスのどちらかが決まっていれば、勝っていたのは彼らだったろう。ジェフには運があった。

先制点の場面、後半立ち上がりのミドル、対戦相手はジェフのボランチの裏側、もしくは脇のスペースを穴とみて狙っている。前節、愛媛戦での先制点も、そこを衝かれたものだった。同じミスを続けていては、いずれ勝敗で報いを受けるだろう。
(実際、水曜日に行われたルヴァンカップ・富山戦では致命傷となった。)

横山、品田のボランチでは、受け身になった時が脆い。
紙一重で結果は出ているが、安定して勝利を目指すには、やはりボランチの1枚は、広い範囲のカバーが出来、守備にも長けたファイターが必要だろう。エドゥアルドの復帰が待ち遠しい。

最終ラインからの組み立て時のリスク管理も従前からの課題。
勝ったからよしとするのではなく、同じ問題を繰り返さない事が大切だ。

一方で、攻撃面では、相変わらず好調の椿。
幅広いエリアを動き回りつつ、ゴールへの強い拘りを見える石川。
かならず違いのあるプレーで決定機を作る、カルリーニョス・ジュニオ。
今季初出場ながら、椿のPKを誘発した杉山と、多士済済。
今日は、全体としては苦戦したものの、伸びしろを感じた。楽しみだ。


(メイン、バックのサポの方もちゃんと煽る鈴木椋大選手)

それにしても、劇的な幕切れだった。
もし、安井がゴール裏に駆け込んで来ていたら、小瀬の柵をまた壊してしまっていたかも知れない。ナイス判断だった(笑)

これで開幕6連勝となり、目の前の一戦一戦に賭ける気持ちはより強くなっている。
冒頭に書いたように、張り詰めた糸を切らさないように、より集中しなければならない。

水曜日に行われた富山戦は、残念な結果に終わったものの、谷田が公式戦デビュー、風間が試合出場を果たし、ベンチにはエドゥアルド、米倉の名前もあった。怪我人が戻りつつあるのは心強い。総力戦が続く状況で、コンディションを整えて、リーグ戦の力となって欲しい。

リーグ戦の次の相手はジュビロ。
その名前だけで気の引き締まる、大きな壁だ。
過去、試合背景も含めて印象的な戦いばかりだったアウェイ磐田。
次節も、苦しい時こそ応援の声を大きくし、試合終了の笛が鳴るまでピッチもスタンドも全員で食らいつき、必ず勝って終わりたい。