競争、集中、そして勝利 2025 J2第5節・愛媛FC戦

競争、集中、そして勝利 2025 J2第5節・愛媛FC戦

2025/3/16(日)14:00
フクダ電子アリーナ
J2第5節
千葉 5(1-1,4-0)1 愛媛

<得点>
8分 愛媛 13窪田
21分 千葉 20石川(14椿が左からカットインしパス、左足でループシュート)
50分 千葉 9呉屋(20石川、右突破折り返し→相手のクリアを拾った44品田のシュートに頭で合わせる)
56分 千葉 20石川(67日高のクロスに頭で合わせる)
72分 千葉 29カルリーニョス(10横山のパスに右足で合わせる)
89分 千葉 10横山(29カルリーニョス戻し→44品田縦パス→38吉田左クロスに中で合わせる)

千葉公式
愛媛公式
Jリーグ公式

春の嵐。冷たい雨が降りしきるフクアリ。屋内の札幌ドームよりも、寒さが身にしみた。悪天候にも関わらず集った多くのジェフサポ。史上初の開幕4連勝にも弛む空気はない。

目の前の一戦に集中。
前日、投稿された小林監督の動画コメントも、これから先、全ての試合でも、これまでと同じように持てる力を全て注ぎ込まねば勝てない。目標を達成出来ない、共に闘って欲しいと訴えていた。

シーズン序盤戦ながら、ジェフは既に『今こそ』と覚悟を決めている。

またも難しい対戦相手を迎えた。
愛媛は、1分3敗。前日、鳥栖、札幌勝利し、暫定で最下位。それだけに、この一戦に賭ける覚悟は並大抵ではない。試合開始後、それをまざまざと見せつけられる事となった。

スタメンは前節から、

GK 椋大→スアレス
ボランチ 田口→品田
FW 林→呉屋

林がベンチ外となり、サブには植田が初めてのメンバー入りを果たした。前節勝利したにも関わらず、GKがスアレスに代わったのは意外だった。

そして、前節殊勲のダメ押し弾を決めた呉屋が、ついにスタメンの座を掴んだ。
品田も開幕戦以来のスタメンだ。

キックオフ。
愛媛は面食らう程の真っ向勝負を挑んで来た。局面局面での囲い込み、コンタクトも激しく、ハイライン・ハイプレスで押し込みにかかる。

最後方からのビルドアップに2トップのプレッシャーが厳しく、思うような組み立てがなかなか出来ない。が、愛媛の攻勢を受けながらも、両サイドの突破力で陣地を取り返し、互いに攻守の切り換えの速い、がっぷり四つの展開となる。

8分、愛媛が勢いそのまま先制する。
13窪田がボールを受けると、猛然とペナルティエリアの角に向かってドリブル。対応した品田の腕も振り払って、強烈な右足ミドルシュートをニアに打ち込む。

敵ながら、見事としか言いようのない気迫の籠もった一撃だった。

先制点に更に勢いの増した愛媛に押し込まれるも、鈴木大輔を中心とした守備陣は、動じる事なく試合を落ち着かせる。
攻勢の裏、サイドのスペース。両翼が1回2回3回と愛媛の守備網を崩しにかかる。

21分。今や戦術兵器と化した椿が左を突破。
カットインした先に待ち構えていた石川にパスをすると、右利きの石川は、『左足』で虹を描くようなループシュートを叩き込んだ。

芸術的な一撃は、愛媛の攻勢を挫き、試合の形勢をジェフに大きく引き寄せる貴重な同点弾となった。

すぐ後の26分にも、右の壱晟から大きなサイドチェンジが左の椿へ。
中を窺った後、後ろから上がって来た日高に戻してクロス。中で呉屋が合わせるも、惜しくも枠外。

その後も、ゴール前のシーンが多く、双方、勝ち越し点を狙ってシュートを放つも、スコアは動かず。勝負は後半戦へ。

後半からの交代は無し。黄色く染まったスタンドに向かって攻めるジェフは、両翼のギアを上げて、一気に勝負を仕掛けた。

50分、石川が右を深々とドリブルで抉ってクロスも、相手がクリア。そのボールが品田へ。ダイレクトで放ったシュートはミートしなかったものの、中に詰めていた呉屋が頭でコースを変えて2戦連発となるゴールを決める。

前節のアクシデントを笑いに変える余裕と、これまでの鬱憤を叩きつけるかのようなジェフ三唱でチームを勢い付ける。

更に前に出ざるを得なくなった愛媛の裏を突き、56分。右の田中から、中央左の日高に展開し、エリア内に狙い澄ましたクロス。これを石川が頭で突き刺さして、3-1。
昨年の仙台戦の小森のゴールを彷彿とさせる豪快な一撃だった。

完全に試合の主導権を握った状態で、68分には呉屋に代えて、カルリーニョス・ジュニオが移籍後初出場。

ボールタッチや、体の使い方が違う。ピッチに入っただけで、見るからにプレーのレベルが高い事は分かった。72分には、ロングスローからエリア外にかき出されたボールを、横山が低い弾道でカルリーニョスに送ると、DFを背負いながら、ダイレクトで軽く合わせてゴールに流し込んでしまった。

歓声と言うより、呆気に取られて一瞬の沈黙があったように思うほどの、鮮やかで技術の高い、挨拶代わりの一発だった。

73分 日高→松田、石川→田口
この交代で、横山が前線にポジションを上げる。

点差が広がっても愛媛は反撃を試みるものの、交代で出場した田口がオーバーヘッド気味に際どいボールをクリアしたプレーに象徴されるように、ジェフは集中が落ちない。

83分、田中→岩井、椿→吉田。両翼の交換。

逃げ切りとは違う、次の1点を奪いに行く攻撃的な交代。
すると、89分。フィニッシュまでのイメージが完璧にシンクロしたゴールが生まれる。
左サイドでカルリーニョスと吉田がパス交換。キープしたカルリーニョスが品田にボールを戻すと、品田はダイレクトで前方のスペースに。そこに駆け込んだ吉田が、中へクロスを送る。飛び込んだ横山がダイレクトで合わせ、5点目を奪う。
ゴールラッシュを締めくくった。

試合はそのまま終了。
これで開幕5連勝。
選手たちからも、安堵と充実感が見て取れた。

カルリーニョスの初ゴールをはじめ、明るい材料も多い試合だったが、
勝負の綾は紙一重。前半は、どちらに試合結果が傾いてもおかしくなかった。

愛媛の先制点は素晴らしいものだったが、対応の強度次第で防ぎ得たものだったように思えるし、先制後には、愛媛のハイプレスに苦しみ、ビルドアップは、かなり窮屈で難しいボール回しを強いられていた。ここで、ミスが起こっていれば2-0となって、平常心を保てなくなり、逆転は難しかったかも知れない。

また、絶好調の椿も、自らシュートを打てる場面で打たず、ラストパスも精度が伴わない場面があった。雨でピッチが濡れていた今日のフクアリのピッチなら、思い切り打っていれば、そのシュートが決まらずともボールがこぼれて、ゴールに繋がっていたかも知れない。

そういう反省を勝って出来るというのはとても大きい。

この一戦に勝てた理由を挙げるとすれば、

一つには、一つがチーム内の厳しい競争だ。
ポジションを保障された選手が誰一人居ない。
今日は呉屋がゴールを決め、吉田は短い時間ながらアシストを決めてみせた。
結果を出さなければ、出番は掴めない。緊張感が常にある。

そしてもう一つは、目の前の一戦に全力を尽くす事に、ピッチ内外で集中出来たからだろう。
試合前、試合中、弛みを感じる事はほとんど無かった。連勝の意味は大きいが、ここで止まったら今までと何も変わらない。そうではなく、変えなくてはいけない。本当の意味で結果を出さなければならない。それを誰しもが、今、理解している。

J2リーグは本当に難しい。
嫌と言うほど理解していても、それでもなお。

試合後、歓喜のビクトリーサークルを作るジェフの選手の向こうに、一列に並びスタンドを見上げる愛媛の選手と、激励と声援を送る愛媛サポーターの姿が見えた。
それは、まるで一昨年の藤枝戦のジェフのようだった。

お互いに必死。互いに全力を尽くした結果がこのスコア。
愛媛もまた、こちらと同じように、苦しい状況でも一心に応援するサポが居る。
リーグ戦は長い。次に対戦するときも、きっと難しい試合になる。
気を引き締めずにはいられなかった。

また次も、目の前の一戦に全力を。