鬼門を越え、4連勝 2025 J2第4節・コンサドーレ札幌戦

鬼門を越え、4連勝 2025 J2第4節・コンサドーレ札幌戦

2025/3/9(日)13:05
大和ハウス プレミストドーム
J2第4節
札幌 1(1-2,0-1)3

<得点>
11分 千葉 7田中(17林のスルーパスを受け、独走。1対1を冷静に沈める)
32分 千葉 14椿(20石川縦パス→7田中の右グラウンダークロスに合わせる)
38分 山形 7スパチョーク
90+1分 千葉 9呉屋(2髙橋の前線へのフィードを、クリアの為に飛び出して来たキーパーをかわしてキープし、無人のゴールに流し込む)

千葉公式
札幌公式
Jリーグ公式

前節に続き、試合前も、試合自体も難しいゲームになった。

戦前の状態は、ジェフが3連勝。
J1から降格して来た札幌が3連敗。その状況で迎える今年の札幌ホーム開幕戦。
そして「札幌ドーム」では、ジェフは過去に勝利した事がない。

またも、壁だ。


自分自身、初めて遠征した札幌。
ドームの周辺はまだたくさんの雪が残っていたものの、中は暖かく過ごし易い。
いきなりの苦しい状況でホーム開幕を迎えた札幌は、この試合を転機にしようと言う気概がひしひしと伝わって来る。最終的に22,292人を集めた大観衆に。ゴール裏には奮起を促す手書き幕が掲げられ、ピリピリとした空気が漂っていた。

その札幌は、前節・山口戦の後半で得た手応えをそのままに前線の3枚を丸々変更。
さらに、3バックの真ん中も、大崎から家泉に変更になっている。

対するジェフは、GKに鈴木椋大した以外はスタメンに変更なし。
リザーブは、薄井、前、小林祐介に代わって、スアレス、松田、カルリーニョス・ジュニオ。松田と、カルリーニョスは、メンバー入り自体が今季初めてになる。

これまで、試合を「締める」役割を担っていた、前と祐介の2人が居ないのはかなり意外。
メンバーだけ見ても、難しい試合になるのは想像に難くなかった。

屋内と言う、普段と違う環境への警戒を述べていた小林監督。
条件の違いに慎重になる必要がある一方、必勝を期すホームチームをリスぺトし過ぎては、勢いに飲まれてしまう可能性がある。選んだ戦い方は、アウェイでも「前に出る」事だった。

試合開始と共に、左の椿を使ってコーナーを得ると、横山のキックには後ろから勢いをつけて突っ込んで来た田中が合わせて強烈なヘディングシュート。入ったか?とも思われたものの、判定はノーゴール。いきなり決定機をつくる。

その後4分にはアクシデント。
クロスに飛び込んだ林と、GK菅野が交錯。林の膝が菅野の頭に接触してしまい、脳震盪の恐れでプレー続行が不可に。GK中野と交代となる。

札幌はラインを高く保ち、プレスでジェフの選手を閉じ込めて波状攻撃を狙い続ける作戦。いわば、エスナイデル監督時代のジェフのような感じではあった。ただ、彼らにはラリベイも、船山も、佐藤優也も居なかったが。

高いラインの後ろには広大なスペースが広がっている。
そこは、好調を維持する田中と椿にしてみれば、おあつらえ向きの「獲物」だった。

負けられない札幌は、前へ前へと圧力をかけてくる。
その背後を目掛けて、カウンターを狙うジェフ。
11分、早くもスコアが動く。林のスルーパスに抜け出した田中。GKとの1対1を冷静に決めきって先制点を挙げる。

さらに前に出ざるを得なくなった札幌は手数を増やしてゴールに迫るものの、鈴木大輔を中心に最終ラインが粘り強い守りでピンチを未然に防ぐ。各選手が声を掛け合って、ラインが下がりすぎないよう調節しつつ、マークを受け渡してフリーの選手を作らせない。

すると、32分。
前節・山形戦のゴールのリプレイかのように、石川の縦パスに抜け出した田中が相手をちぎってエリア内に侵入し、逆から走り込んだ椿が合わせて2-0。一気に突き放す。

その後は、2点差がついた事で、前への意識が弱まったか、あるいはさらに札幌を自陣に引き付けてカウンターを狙おうとした意図的なものか。全体の重心が下がってしまい、ビルドアップのボールを狙われまくって完全に後手を踏んでしまう。

38分には、左からアバウトに放り込まれたボールをクリアしきれず、こぼれ球をスパチョークに強烈なボレーで合わされて失点。札幌に今季初得点を許し、勢いに乗せてしまう。

長いATも含め、残る時間は一方的に攻められたものの、何とか耐え切って前半は2-1とリードして終える。

迎えた後半も、札幌の勢いを止められず。開始早々に日高の裏にボールを通され、「あわや」のシーンを作られるも、同点だけは許さずに少ない逆にチャンスから3点目を狙いに行く。56分には、壱晟がエリア内で強烈なシュートを見舞うも、これはセーブされる。

攻める札幌、守るジェフ。
ジェフはゴール前を固め、札幌は左の田中宏武を突破口にサイドから打開を図る。
ボールを高い位置で回収され、手数は多く攻められるものの、要所を押さえて効果的なシュートは許さない。

押される展開に、小林監督は交代で対応する。

66分、足を気にしていた、横山に代えて安井。

そのままボランチに入る。入るなり、通れば得点に即繋がりそうな際どいスペースへのパスを幾度も繰り出すのだが、芝の具合が悪く、パスが走らずにカットされてしまうのが惜しい。

70分、田口→品田、林→呉屋

さらに、

77分、田中→岩井、日高→松田

前節までなら、河野を入れて後ろを5枚にして放り込みを跳ね返すところ、3回目の交代で切ったカードは意外だった。

何度か裏を狙われていた日高→松田と、まだ体力的には余力がありそうな田中→岩井。

松田は、昨年最終戦の山形戦以来の出場。
そのまま日高に代わって左サイドバック。
不慣れなポジションだったろうが、鈴木大輔の指示を受けながら無難に役割をこなす。

一方、岩井は、ボールを受けるや、一人でもゴールを奪ってやろうという気の強さがスタンドまでビリビリ伝わってくる。
監督の指示が果たしてどのようなものだったか聞いてみたい。時間稼ぎというより、トドメをさして来いと送り出されたかのような仕掛けで、札幌のディフェンスを3枚4枚と釘付けにしてみせる。

ここまで3試合とは違うやり方で、こちらの攻撃の目を残し、札幌の攻撃を牽制しながら、時間をすり潰していく。

後半のATは7分。
椿に代え、吉田源太郎もここで初出場。
(6人目の交代。菅野の脳震盪による退場で交代枠が両チーム1つ増えた)

その+1分だった。壱晟から、前線へロングボールが送られる。
頭でクリアしようとした相手GKに競り勝って、呉屋がボールをかっさらうと、そのまま無人のゴールに流し込んで、試合を決める1点を奪う。

喜んだ呉屋は、落差3mある看板を思わず飛び越えてしまい、、、
心配されたが、本人談で事なきを得て、試合終了まで出場。
札幌の最後の猛攻も凌ぎ切って、1-3。
勝鬨の「WIN BY ALL!」がドームに響く。開幕4連勝だ。

改めて苦しい試合だった。
3連敗からの巻き返しを期す札幌は、ベンチ、スタンドも含めて背水の陣。

高いラインの裏を衝いて2点を先行したものの、その後は「引き付けてカウンター」を許さないほど、猛攻に次ぐ猛攻を受けてしまった。特に壱晟のサイドは再三1対1を仕掛けられて苦戦。しかし、中でフリーの選手を作らせずに守り切った。

この試合でも目立ったのは守備だった。
大きく手を広げ、身振り手振りで指示を出す鈴木大輔を中心に、ポジションを入れ替えながら攻め込んで来る札幌の選手たちを自由にさせず、失点場面以外、コースを限定した窮屈な状況でしかシュートを許さなかった。1人が抜かれても、誰かがカバーに入る。本当に危ない場面では、ポジションを捨ててでも鳥海が身体を張って潰しに行く。分厚い守備が出来ている。

攻撃陣も両翼のスピードを活かして2得点。
警戒されていても、それを上回る。
さらに最後まで集中した前線からの追い込みが結実した呉屋の追加点。
これまでのジェフなら、追いつかれていたところを逆に突き放した。

試合を通じて押し込んでいたのは札幌だったが、試合を掌握していたのはジェフだった。

鬼門と言われた札幌ドームでも勝利し、連勝継続。
それに気の緩んだ様子が無いのは心強い。
誰もが期するものがある。この連勝を無駄にはしないと。

次は3月唯一のフクアリでのホームゲーム、愛媛戦。
これまでの4試合と同じく、目の前の一戦に集中して勝利を。