壁を越える為の4度の「WIN BY ALL!」 2025 J2第3節・モンテディオ山形戦

壁を越える為の4度の「WIN BY ALL!」 2025 J2第3節・モンテディオ山形戦

2025/3/1(土)14:00
フクダ電子アリーナ
J2第3節
千葉 3(2-2,1-0)2 山形

<得点>
13分 山形 25國分
23分 千葉 10横山(4田口の落としをドリブルで相手を剥がして右足ミドル)
37分 千葉 14椿(20石川縦パス→7田中の右グラウンダークロスに合わせる)
38分 山形 42イサカ
64分 千葉 13鈴木大(日高のFK、相手キーパーがこぼしヘッドで押し込む)

千葉公式
山形公式
Jリーグ公式

2014年のプレーオフ決勝敗退。
直近7年間未勝利の天敵。
プレーオフを賭けた昨年最終戦の苦い記憶。

山形は、越えなければならない大きな壁。
これ以上、彼らには負けられない。何としても。絶対に。
ジェフに関わる誰もが、勝利への強い執念を持ってこのゲームに臨んでいた。

一方の山形。
アウェイ自由は発売と共に完売。
しかし、思いもよらぬ開幕連敗スタート。
相性の良いジェフを相手に悪い流れを断ち切りたい。

昨年、最後までプレーオフを争った同士、
この一戦に賭ける思いは互いに譲らない。

快晴のフクアリ。
春を通り越したような季節外れの暑さになった。

スタメン発表にいきなりざわつく。
これまで不動のスタメンだった鈴木椋大がベンチにも居ない。
代わって先日獲得したばかりのスアレスがスタメンとなった。
経験は十分だが、合流間もない、しかも外国籍選手だけに、連携が心配。

左SBは、前節に続き日高。
彼が先発という事は、守り主体ではなく、対面のイサカとガチガチにやり合うと言う意思表示。

ベンチからはデリキが外れ、怪我から復帰した安井が名を連ねた。
(前日登録完了したばかりのカルリーニョス・ジュニオはさすがにベンチ入りしなかった)

山形は昨年からのメンバーがほぼ残留し、前線にはディサロ、國分、土井、イサカといった厄介な面々が並ぶ。ただ、こちらもキーパーは、昨年と変わって長谷川。後藤は長崎に引き抜かれている。

スタンドの1/5近くを埋めた山形サポの大声援をかき消すように、
試合開始前、この日1回目の「WIN BY ALL!コールがフクアリに響く。
エンドチェンジはなく、通常通りの配置で試合開始。

挨拶代わりに椿が突破を試み、倒されて西村にイエローカード。
そこから、セットプレーで連続攻撃。
試合開始から、局面局面で激しい戦いが続く。

この両チーム、渡邉監督の下で、小林監督がコーチを務めていただけに、同門対決で似通ったところがある。違うのはジェフがより最終ラインから細かく組み立てようとすること。山形はもっと割り切ってシンプル。細かく後ろで繋いでいても、そこから一気に両ウイングがDFラインの背後を衝いてくる。ペナルティエリアの両脇のスペースを使うのが抜群に上手い。

3トップがスピード、フィジカル、キープ共に優れ、
その3人をサポートし、かつ自身が本命でもある、神出鬼没の土居。
分かってはいても、防ぎ切る事が困難な攻撃。

前半5分には、早くも揺さぶられ、土居に強烈なシュートを浴びるも、スアレスがつま先で触っていて、辛くもポストへ逃れる。これが決まっていたら試合結果も変わっていたかも知れない。

10分にはイサカにもイエロー。
早い時間に2人目のイエローで、山形の右サイドから思い切りが無くなるかとも思ったが、そんなことは一切なく。プレスはますます激しくなり、後ろでボールを回すジェフのパスに余裕が無くなる。鳥海が続けてミスをすると、そこから山形の波状攻撃を食らった。

13分、中央から縦パスをブロックしきれず、大輔が入れ替わられてパスを繋がれ、サイドから流れてきた國分に振り抜かれて先制点を許す。
勢いに乗る山形。やはり一筋縄にはいかない。

しかし、昨年と違い、失点しても浮つく事無く反撃の機会を伺う事が出来た。
23分。山形のクリアボールを繋ぎ、田口→横山と繋ぐと、横山がフェイントで相手をかわしながら、右足を振り抜き、ファインゴール。同点。

流れを引き戻すと、左から椿、日高、横山のコンビネーションで揺さぶりをかけ、ゴールを脅かす。
何度かのチャンスを作った後、37分だった。ハーフウェーライン付近でボールを受けた石川が、前線のスペースへ目の覚めるようなスルーパス。田中が並走するDFをちぎって追いつき、グラウンダーのクロス。走り込んだ椿が合わせる。

昨年のアウェイ藤枝戦のゴールを彷彿とさせる鮮やかな連携で仕留めてみせた。

椿は先日結婚発表をしたばかり。
自ら祝砲を挙げると、チームメートと「ゆりかご」(これは、壱晟の娘さん誕生を祝うものだった)。
フクアリのムードは押せ押せだったのだが。。。

そうそう簡単には「大人」には、なれないのか。
逆転からすぐに、今度は山形に左大外→左中→右と鮮やかにボールを通され、イサカに決められ同点に追いつかれてしまう。
「いつも通りのジェフ」が顔を覗かせる。

攻め合いとなった前半は、これ以上スコアが動かず、2-2で終了。

後半に入ると、お互いに次の1点を奪うため、さらに攻守の入れ替わりが激しくなった。
ジェフは両サイド、特に絶好調の椿が再三自ら仕掛けて、左からチャンスを作る。
あと一歩届かないものの、得点の予感は高まっていた。

すると、64分。
右サイドで田中が倒されて得たFKを、日高がゴール前へと送ると、相手GKが掴み切れずにボールをこぼし、それが鈴木大輔の目の前に。逃さず頭で押し込んで、再びジェフがリードを奪う。

怪我から復帰し、心中から迸るものがあったのだろう、力強いガッツポーズでスタンドを煽り、この試合に必ず勝つという強い思いを伝えてくれた。

それに応え、67分にはスタンドから「WIN BY ALL!」の大声援が飛ぶ。
もう油断するな。必ず勝ち切ろうとメッセージの込められた、ピッチへの答礼だった。

リードされた山形は、70分に前線のディサロ、イサカ、土居を一気に交代。
高橋、吉尾、藤本。さらに、78分には國分→氣田。

躊躇なく、次々と攻撃のキーマンを交代する山形・渡邉監督。
それだけ、ベンチのメンバーにも強い信頼があるということ。

対する小林監督は、73分に日高→前、田口→品田、林→呉屋の3枚替えで対応。
さらに80分には、彼もまた怪我明けの安井を石川に代えて投入。
横山がFWに近い位置に入り、安井はボランチを任された。
“クローザー”的な立ち位置の小林でなく、安井と言うのは意外な采配だった。

終盤に向けて激しくなる山形の攻撃をジェフは粘り強く封じていく。
左に入った前は、確実な守備で山形の右の翼を折るだけでなく、オーバーラップしてCKを奪うなど相手にとって憎たらしいプレーを淡々とこなして試合を終わらせにかかる。

スペースを失った山形は、田中渉がミドルで同点を狙うも、スアレスがしっかりとキャッチ。

86分、ジェフは横山に代えて河野を投入。5バックでゴール前を固め、前に大きく蹴って時間を使い、1点を守り切るプレーに明確に移行した。スタンドからは、この日3度目の「WIN BY ALL!」コール。残り約10分。ピッチも、スタンドも、この1点で勝つんだと気持ちを1つにした。

固められたゴール前を破ろうと、山形もギアを挙げる。

87分には右から氣田がダイレクトでクロス→藤本のヘディング。
89分にも右の高橋から低いクロス。
寸でのところで防ぎはするものの、手数をかけず、少ないタッチで危ないシーンを作られる。
縦横無尽に動いてジェフのギャップを伺う氣田のボールキープがとにかく厄介だ。

ジェフは、1トップの呉屋が集中力の高いプレスで相手を追い込む。
コーナーでセットプレーを連続で獲得。
他の選手達も同じように、相手を焦らし、時間をすり減らし、勝負に徹し、勝利を引き寄せてゆく。

山形も最後まで猛攻を仕掛けるも、ジェフは集中力を切らさず、タイムアップ。
誰もが大きな雄たけびをあげ、肩を組み、抱き合い、勝利を噛みしめる。
スタンドからは、この日4度目の「WIN BY ALL!」コール。
大きな壁をまた一つ越えて開幕三連勝を果たしたのだった。

戦前の予想と違わず、難しいゲームとなったものの、先制されても、同点に追いつかれても、最後に勝つのだという軸がブレる事無く、集中出来た事が勝利の要因だった。
ピッチの中も、スタンドも、それは同様だった。

この一戦を「ただの一試合」にはしなかった。
昨年昇格を争った相手に、まだ一つだけではあるけれども、ようやく借りを返す事が出来た。

何も問題が無かったわけではない。
特に、失点シーンは相手に対する対応や、やられたタイミングを考えれば、集中した中の僅かな隙が、即、失点の繋がるという怖さを見せつけられた。他にも再現性がある形で、サイドから相手に崩しを許している。
また、初先発したスアレスとの連携もまだ十分とは言えるものではなかった。

それでも、勝利してそれらの問題を振り返れるのは良いことだ。

攻撃陣では、椿、横山、日高のトライアングルが好調。
他の選手たちも含め、前節富山戦よりも、自らシュートを打ち切る姿勢が強くなっていたのは今後に向けての明るい材料だ。

呉屋と安井は今季初出場。
特に安井は怪我からの復帰で久しぶりの出場になった。
今後、さらに競争が激しくなるのが楽しみでならない。

次節は札幌が相手。言うまでもなく、強敵。
札幌ドームは勝てた事のない鬼門。
アウェイはいつも厳しい戦いになる。

それでも、今日と変わらず、目の前の一戦に集中して戦うことが出来れば、勝ち点をもぎ取る事がきっと出来るはず。相手をリスペクトし、ジェフが今できる事を全て出し切って、次の大きな壁を皆で越えよう。