ここで絶対に終わらせない 2024 J2第36節・藤枝MYFC戦

ここで絶対に終わらせない 2024 J2第36節・藤枝MYFC戦

2024/10/26(土)14:00
藤枝総合運動公園サッカー場
J2第36節
藤枝 2(2-1,0-2)3 千葉

<得点>
10分 藤枝 8浅倉
25分 藤枝 9矢村
41分 千葉 16横山(14椿の左からのパスを中で10小森が潰れて16横山がシュート)
65分 千葉 10小森(7田中の折り返し)
78分 千葉 14椿(7田中の右アーリークロスを左膝で)

千葉公式
藤枝公式
Jリーグ公式

意地のぶつかり合い。
J1昇格を賭けて、勝たなくてはならない戦いが続く。

残るは3節、アウェイ藤枝。
昨年、惨敗を喫し、逆襲への第一のターニングポイントとなった地だ。
昨年とは、ホームとアウェイが逆になったスタンドを埋めたジェフサポーター。
藤枝にとってはホーム最終戦となったゲームを黄色く染め上げた。

スタメンにはエドゥアルドが復帰。
さらに杉山に代わり椿が先発。
田中は本来の右に回った。

キックオフからはジェフの攻勢。
前線からプレッシャーをかけて藤枝を押し込み、
前線に君臨する小森が、早速こぼれ球を受けてシュートを放ち、先制を狙う。

悪くない入りに見えた。
が、それも束の間、藤枝が彼ら本来の良さを発揮して逆に先制に成功する。
10分。藤枝の繋ぎを田中がファウル気味に止めに入るが、一歩強く前に踏み込んだシマブクが、倒れながらも足を伸ばして前線の浅倉に繋ぐと、浅倉は対面の佐々木を剥がして右足でシュート。コースを狙った弾道に鈴木椋大は触る事が出来ない。

予想外のあっさりとした失点。
選手達が集まって状況を再確認するものの、動揺が収まらない。
まるで鉛を身体に巻きつけてしまったかのように動きが重い。
不味い。この流れはまるでアウェイ鹿児島のそれのようだ。
逆に藤枝は先制に勢いづき、さらに走り、競り合い、基礎の部分で先手を取り、ジェフを押し込む。

すると25分。左から藤枝のパスに1人が潰れてボールが流れ、予期せず相手のエース矢村の足下にボールが繋がる。矢村は反応の遅れた佐々木のブロックをものともせずにドリブルで吶喊すると、抜け出して左隅にシュートを流し込んだ。

0-2。

再びできる円陣。重い空気。
2失点に絡んだ佐々木は、動揺が抑えきれない様子だ。
試合再開後、武器であるはずの左足フィードが定まらずに相手に引っ掛けてさらにピンチを招いてしまう。

苦しい状況の中、スタンドのサポは覚悟を決めて声を絞りだす。
このままでは終わらない。
ここで終わってなるものか。
何のために、今日、ここに自分は居るのかと。

あらん限りの『Let’s go JEF』が選手の背中を押す。

しかし、大声援を受けても、ギアはなかなか切り替わらない。
苦しい時間が続く。
3点目だけは許さずに藤枝の攻勢を凌ぎ、耐える。
すると、徐々に両翼の椿、田中が藤枝陣内でボールを前を向いて受けらるようになる。

ゴールの予感は遠かったが、反撃は唐突。
41分、中盤で奪ったボールを左翼の椿が受けてドリブルで切れ込むと、相手の股を抜いて折り返す。手前で小森が潰れ、中で流し込んだのは横山。

古巣のサポーターの目の前で、反撃の狼煙を上げてみせた。
前半は、1-2で終了。

1点を返したものの、まだまだ動きは重い。
ハーフタイムで監督の檄は入るだろうが、それだけでは足りない。
同点、逆転には前半のように藤枝にボールを握らせてはならない。
こちらがボールを持ち続け、攻め続けなくてはならない。

後半に向け、ベンチが動く。
小川に代えて、山越。意外な一手だった。
山越は左CBへ。佐々木が左SBにポジションを変えた。

WIN BY ALL!! のコールと共にキックオフ。
小森と横山が敵陣深くまでボールを追いかける。
藤枝が大きく蹴り出したボールは、山越がシンプルに弾き返し、左の佐々木へと繋ぐ。
佐々木は、椿の裏のスぺースにボールを送り込み、自らも駆け上がる。
その連動した推進力が、後半の反撃の原動力になった。

50分には、佐々木のフィードに椿が抜け出し、中で小森が合わせるも、判定はオフサイド。全く無かったように見えたのだが。が、立て続けにチャンスを作り出し、藤枝の重心が下がっていく。主導権は明らかにジェフに移っていった。

田中が、椿が、さらには佐々木が両翼を抉って波状攻撃を仕掛ける。

一方の藤枝も、前に出るジェフの間隙を衝いて、シュートチャンスを作り出し、試合を決めにかかるが、鈴木椋大がゴールを許さない。ピンチを凌ぐと、一層のプレッシャーをかけ、椿、田中、横山、小森が、次々にゴールに迫る。

決めきれず、あるいはゴールが認められず、なかなかスコアを動かせない。
それでも65分。松田がボールを一気に田中の前のスペースにボールを蹴り出すと、アクセルを踏み込んだ田中は、強烈な加速で相手を振り切ると、中の小森に繋いで、ついに同点に追いつく。

まだ足りない。まだ同点。交代を挟み、さらに攻勢を強くするジェフ。
一方的な波状攻撃が続き、小森がゴールを狙うも、藤枝も寸でのところでそれを防ぐ。

何度目かの攻撃。
またも、松田のフィードに、田中が駆け出す。
中には、小森。さらに大外からもう一人。
そこへめがけて、アーリークロスが放り込まれる。
ディフェンスもキーパーもすり抜けて、合わせたのは椿。
膝で押し込んだボールは、逆転弾となって吸い込まれていった。

歓喜の輪が出来る。
残り時間は10分以上。
まだ試合は終わっていないと、歓声の弾けるスタンドのあちこちで、
空気を引き締める声が叫ばれていた。

どう勝ち切るか。その意思統一が出来るか。
守りに入り、一方的な攻撃を受ければ、防ぎきれるものではない。
それでもジェフの選択は、1点を守り切る事だった。
前に出る藤枝を裏返し、カウンターからセットプレーを奪い、ドリブルで深く切り込んではキープを試みる。前節、魂の籠ったキープを見せた林は、この日も時間を作ってみせた。

ATは5分。
勝ち切る事に特化した泥臭いプレーをやりきって、タイムアップの笛。
この日、三度目となる「WIN BY ALL!」のコールが勝鬨となった。

二戦連続の逆転勝利。
二点差をひっくり返して5連勝。4位を死守。
プレーオフ進出に向けてまた一つ関門をくぐり抜けた。

苦しいゲームだった。
集中して試合に入ったはずだったが、エアポケットに入ってしまったかのように2失点。
自分たちが想定していなかった状況になったとき、気持ちを強くいられるか。
改めてそれが突き付けられた戦いだった。

正直1失点目では、悪い空気に流されただけだった。
2失点目で、スタンドも含め、何かが吹っ切れた。
これまで積み上げたものをここで終わらせない強い意志が、逆転を呼び、次に繋げる結果となった。

昇格への思いを焦がし、各クラブが正念場の一戦を戦っている。
長崎、岡山、仙台、山形、全てのチームが今節勝利した。
そして次節は長崎が相手だ。

プレーオフ同然のこの一戦を、フクアリで出来る。
ホーム最終戦。昨年の自分たちを超える為に、一戦必勝だ。