積み重ねは着々と 第28回 ちばぎんカップ ・柏レイソル戦

積み重ねは着々と 第28回 ちばぎんカップ ・柏レイソル戦

2024/2/18(日)14:00
三協フロンテア柏スタジアム
第28回ちばぎんカップ
柏 1(0-1,1-1)2 千葉

<得点>
37分 千葉 10小森(2髙橋のミドルをキーパーが弾き、押し込む)
81分 千葉 77ドゥドゥ(4田口のスルーパスに抜け出し、ループシュート)
90+5分 柏 10マテウス・サヴィオ(反転して右足ミドル)

千葉公式

一週間後に開幕を控えたちばぎんカップ。
両チームとも新戦力が先発に名を連ね、現段階の試行錯誤が垣間見えるメンバー。

ジェフは、GKに藤田。
さらに両CBも、メンデスと久保庭と言うフレッシュな顔ぶれに。
見木が抜けたボランチには横山が入り、1トップは新10番小森。

キックオフと共に、両軍共に激しいボディコンタクトの応酬。
PSMだと言う事を忘れさせる肉弾戦があちこちで起こり、一時は小森が肩を押さえて動けなくなる場面も。昨年の柏からは動きの重さを感じたけれども、今年はそれがない。

両軍とも、スタイルは似通ったところがある。
前からプレスをかけてボールの出しどころを限定し、その先にプレスをかけて奪い、ショートカウンターを仕掛ける。その一歩一歩の速さであったり、当たりの厳しさであったり、サポートへの速さ、ボールの出しどころを作るランニング。
そうした細部の積み重ねの部分が、ゲーム展開の優劣を決める、そんな試合の入りだった。

その鍔迫り合いのような展開から、徐々にペースを握ったのはジェフ。
選手と選手の距離感が良く、昨年よりも狭く、難しい、チャレンジのパスが通るようになっている。パス&ゴーが徹底されていて、選手が立ち止まっている事がない。
居て欲しい場所に、ちゃんと選手がいる。そんな心地よさがあった。

新加入の横山は、そのなかに既に溶け込んでいて、ボールを引き出し、展開し、自ら動いてボールをさらに前に運ぶ。どことなく、羽生直剛をイメージさせる「水を運ぶ」プレーをみせていた。

他の選手達も、「自らの持ち場を捨てる」プレーに対する思い切りが良く、またそうして穴が空いた時には、自身が全力で戻ってカバーする事はもちろん、他の選手がスライドして、メリハリの効いたプレーで柏の選手が前を向くのを阻止していた。

そうして、一つ、二つ、三つとパスが繋がった先にシュートが生まれる。
ここでも、誰かを探すプレーよりも、自ら撃ちきる決断力が増していたように思う。
各メンバーが自らゴールを狙えば、当然、それ以外の選手が空く。

小森の先制点はまさにそうして生まれたゴールだった。
ボックス内で小森がボールを受け、時間を作ると、フリーの田口にパスを繋ぐ。
その田口のシュートはブロックされるも、こぼれ球に詰めた壱晟が右足を振り抜く。
柏GK松本がかろうじて弾くものの、そのボールに詰めたのは小森。

小森を警戒する故に、小森以外の選手が空く。
他の選手がゴールを狙うほどに、小森がフリーになる。
相手からすれば厄介極まりない。

先制点の後も、田中、高木が、あわやという場面を作り出していた。
前半は、時間の経過とともにジェフが主導権を握り、上々の展開だった。

名前が出なかった選手を補足しておくと、まず新顔が並んだDFライン。

藤田は前評判通りのフィードの正確さを披露して、守備の安定感と、素早い攻守の切り替えに早速貢献。メンデスは高さと強さだけでなく、スペースのカバーやフィードボールでも持ち味を発揮。久保庭も、守備の読みが良く、期待以上の安定感。

両翼、まず左の日高は相変わらずの運動量と、サイドだけでなく中に切れ込んでの突破力で相手に背走を余儀なくさせるアクセントあるプレー。
右の壱晟はマテウス・サヴィオの対応に苦しみながらも、時間の経過とともに同サイドの田中と連携を深めて、マテウス・サヴィオを抑え込むだけでなく、自身の攻撃参加を増やしてシュートシーンを作り出して持ち味を発揮。

田口は、試合後に反省の弁を述べていたものの、スペースへのパスは普段よりも良いくらいだったのでは。左の高木の先発は驚き。時間の経過とともに良くなり、終盤にはシュートシーンも。風間は相変わらずのリンクマンぶりで、横山と共にリズムを作る存在だった。

そして、7番を背負った田中。昨年よりも逞しさが増した印象。
自分自身でやり切る意識が強くなったように思う。

特定の誰かが悪いと言う事も無く、このメンバーでも十二分にやれていたことに驚かされる前半となった。

迎えた後半。メンバー変更は無し。

さらにジェフが攻勢を仕掛ける。
プレスの網が柏をしっかりと搦めとって、ボールを前に運ばせない。波状攻撃。
ゴールこそ認められなかったものの、高木が左から突破してボックスに侵入、小森、田中の連続シュートでネットを揺らすものの、オフサイド判定。

60分に高木からドゥドゥに交代した直後には、そのドゥドゥが決定機を2つ掴むものの、GKに阻まれてノーゴール。今日は彼の日では無いと思わせておいて、81分には田口のスルーパスからループシュートを決めるあたり、今年も得点源として期待して良さそうだ。
ただ、年齢的なものもあるので、起用方法は少し変わるかもしれない。

78分には、風間に代えて期待のエドゥが出場。
ボランチに入り、横山は風間の位置にポジションを上げる。
結局、横山はフル出場。線の細さに見合わない局地戦の力強さも見せて、期待通りのデビュー戦となった。

一方のエドゥは出場時間が短く、全体の運動量が落ちて来る時間帯でもあったので、まだ顔見世程度と言ったところ。今後のポジション争いが楽しみだし、彼がフィットすれば、もう一段階強度の強いサッカーがみられるようになるだろう。

そう、強度のあるサッカーをやっていると、それを90分維持するのは難しい。
それは柏も一緒だったけれども、ホームで負けられない柏の終盤の攻勢を受けた時には、やはり引かざるを得ない展開にもなった。

呉屋、米倉、小林を投入して運動量の維持を図るも、さすがに同じサッカーは出来ない。
ある程度引いて、そこからカウンターを狙うサッカーに移行する。

そのままゼロで抑えたかったところだけれども、ATにはマテウス・サヴィオに強烈なミドルを被弾して2-1で試合終了。甘くはないぞと、釘を刺されたかのようだった。

MVPは先制点の小森。
新背番号10として早速自らのゴールで勝利に導いた。
後半17分には、左サイドでボールを奪うや、キーパーの位置が高いとみるや、そのままシュートを放ってみせた。常にゴールを狙っている恐ろしい選手。ポストプレーやアシストも出来てしまう上に、その存在自体がスタジアムを熱狂させる。まさに今年のジェフの顔だ。


(ちばぎんカップを掲げる久保庭。アカデミー出身の選手が活躍するのは感慨深い。)

全体として、柏相手に主導権を持って戦えた事は、取り組んでいる方向性に自信を持てる好ゲームだった。昨年の主力からメンバーが入れ替わっても、それ以上の上積みを感じる事が出来た事も大きい。

一方で、これから始まるJ2リーグ戦において、柏のように前に出て来る戦い方をしてくるチームは決して多くはない。普段、そのような戦い方をしているチームですら、ジェフと戦う時はやり方を変えて来るかも知れない。その上を行けるか。

これから始まる長いリーグ戦は、しかしあっという間に終わってしまう戦いでもある。
目の前の一戦に集中して、勝って、勝ち点を積み上げるだけ。
その先にある優勝、そしてJ1復帰を、本気で目指して戦わねば。
その覚悟を新たにしたちばぎんカップだった。