想いを乗せて主将が吼える J2 第7節 新潟戦

想いを乗せて主将が吼える J2 第7節 新潟戦

2022/3/30(水)19:00
フクダ電子アリーナ
J2第7節
千葉 1(0-0,1-0)0 新潟

<得点>
90+5分 千葉 13鈴木大輔(4田口のCKをヘッド)

千葉公式
新潟公式
Jリーグ公式


一点の重み。
産みの苦しみ。
幾度となくゴールに迫りながらも、揺れないゴールネット。

ラストプレーだった。
右CK、田口の蹴ったボールを誰かがニアで反らす。
軌道がハッキリと見えた。
キーパーの伸ばす手は届かない。
今度こそネットにボールが吸い込まれる。

その瞬間、フクアリの歓喜が弾け、誰彼となく喜びを共にする。

ピッチの中もそれは同様で、
立ち上がり、吼えたのは鈴木大輔主将。
ベンチからも選手が、スタッフが駆け寄り、大きな歓喜の輪を作る。
尹晶煥監督もまた、コーチと抱き合ってこの一点を噛みしめていた。

2022シーズンが始まって、フクアリではリーグ4試合目。
ちばぎんも含めれば5試合目。
450分以上戦って、ようやく生まれたゴール。
溜まりに溜まった鬱憤が、ホームで勝つことの難しさ、苦しさが、この一点には詰まっていた。


土曜日の栃木SC戦。
あの敗戦から4日。

気持ちを切り替える間もなく、ゲームはやってくる。
水曜日のナイトゲーム。迎えるは連勝中の新潟。
17時前に発表されたスタメンは、サブも含めて大きく異なっていた。


ミンギュがディフェンスに戻り、ボランチにはアンドリュー。
WBは左が秋山、右には福満が本来のポジションに戻った。
控えにも、高木、サウダーニャ、末吉、米倉と言ったメンバーが並ぶ。

これまで苦しい状況を支えて来た若手たちは一旦お休み。
今日は経験ある選手たちが、本来のポジションで名を連ねた。

が、前半は苦しい展開だった。
新潟は、10番・本間至恩を中心に、ジェフを上回る運動量、球際での強さ、何より複数の選手が連動したプレッシングで囲い込み、高い位置でボールを奪っては鋭いショートカウンターを仕掛けてくる。

この日のフクアリのピッチは、まるで彼らのサッカーにおあつらえ向きに整備されていたかのようで、よくボールが走り、彼らの細かいパスワークが小気味良くハマっていく。
その圧力に押し出され、思うようにボールを保持できない。最終ラインまでボールを戻しても、なお圧力をかけられ、幾度も新井章大からのフィードがサイドラインを割ってしまう。副産物として生み出されるコーナーキックが積み重なり、息をつく暇がない。

仮に前半早い段階で、また失点を喫していたら、群馬戦、栃木戦と同じような展開に持ち込まれていただろう。いや、新潟が前がかりな分、複数失点を喫して勝負が決まってしまっていたかも知れない。

秋山の突破、見木のミドルなど、数えるほどしか攻撃が出来なかった前半だったが、失点だけは許さなかった。
その粘りが、後半の反撃へと繋がってゆく。


迎えた後半、新潟は変わらずプレスから攻撃を仕掛けてきたが、ジェフは選手交代を機に、徐々に新潟からペースを奪い返してゆく。

60分、秋山→末吉、風間→高木。
末吉は、秋山以上にソリッドに、左を「縦」に切り裂いた。
高木は、前線で相手が嫌がるスペースに飛び込み、そこでタメを作って橋頭保を作る。

67分、ソロモン→サウダーニャ、福満→米倉。
これで、「縦」への推進力が一層力強くなった。
即興と強引さを合わせ持つサウダーニャのリズムは、妙に高木のそれと噛み合う。

前半は、ほとんどボールを握られっぱなしだったが、時間の経過とともにジェフがボールを握り、新潟陣内に圧力をかけていく。アンドリューが刈り取り、田口が展開したボールを前線へ。サウダーニャ、高木がキープし、そこからサイドに開いて細かいパス交換。「縦」への突破口を探る。

71分には決定機。
自陣から左サイドにシンプルに開き、縦に抉った末吉のクロスにサウダーニャ。
キーパーと1対1、フリーで放った左足のシュートは、場内放送がフライングで「GOAL」のコールを流してしまったほどだったが、力み過ぎてしまったかサイドネットの外に刺さってしまう。

ボールを奪い返す位置が高くなり、攻撃がシンプルになり、手数が増える。
その裏を衝いて新潟も、繋ぐパスだけでなく、裏狙い、縦一発のパスで決定機を作ってくるが、鈴木大輔を中心に最後の一線は割らせない。

(試合終了時の布陣 88分には足を攣ったアンドリューに代わり、小林が入った)

お互いの持ち味が出て、攻守の切り替えが激しくなった終盤。
両軍が1点を求めてオープンな展開になるにつれ、コンタクトプレーへのジャッジの基準が曖昧になり、フラストレーションが溜まる展開にもなった。

が、ゴールには迫るものの、スコアは動かない。
激しい展開のままアディショナルタイムへ突入。

94分、ジェフは最後の攻撃。
右から左へ展開したボールを、鈴木大輔が末吉に送る。
末吉の突破から見木が中央で合わせるが、相手のブロックに遭う。
そうして獲得した最後のコーナーキック。
田口の蹴ったボールに、鈴木大輔。

数日前とは逆に、大きな歓喜がこの時間に待っていたのだった。

主軸の復帰、本来のポジションでの起用。
新潟に先制点を許さなかった集中した守備。
流れを変えられる選手たちの復帰。
攻撃に強みを持つ新潟だからこそオープンな展開に持ち込めたこと。

薄氷の勝利の要因はいくつもある。

が、何より、フクアリ全体から、「勝ちたい」と言う熱感が溢れていた。
ホームでゴールが見たい、フクアリで勝利が見たい。その渇望が、スタンドからピッチに伝わり、時間の経過とともに密度が濃くなっていった。
鈴木大輔の決勝点は、そういう一人一人の思いが、ゴールをこじ開けたように思えてならなかった。

サッカーには、「そう」としか思えない瞬間が確かにある。

開幕から1か月、メンバーが揃わず、苦しい状況だった。
が、マイナスばかりでもない。
若手が伸び、新外国籍選手もようやくチームに合流。
選択肢を増やしてこれからの試合に臨む事が出来る。

今後、上位との対戦が続き、楽観出来る状況ではないけれども、ベストメンバーに近い布陣で戦えるのは大きい。まずは目の前の一戦一戦で勝利を積み重ね、上位を追撃したい。

ようやく、フクアリにもサクラが咲いた。
さあ、ここからだ。

<追伸>

劇的な勝利の反面、残念な事もあった。
後半、ジャッジが曖昧になるにつれ、スタンドからは審判の判定に対する、異議、野次、罵声が溢れていた。あまつさえ、マスクをわざわざ外して罵声を飛ばす人間も。
もしこれで逆に劇的に敗戦していたら、どんなに酷い状況になっていたか。

コロナ禍の中、試合を成立させる為に、どれだけの苦労が払われているか、知らないはずがない。彼らには考えが及ばないのだろうか。まして、ジェフはクラブ内の感染で戦力を削がれて苦しんでいる。

声援が出来ない今、彼らの口汚い声は余計に通る。
ルールを守れなければ、試合は成立できない。

それに、雰囲気の悪さを不快に思い、怖がる人もいるだろう。
大切な仲間をスタジアムから遠ざける事になるかも知れない。
それは応援ではなく、ただの妨害行為だ。

勝たせたいが故の、と言う心根は解る。
が、それならば、ルールの中で出来ることはあるはずだ。

ルールを破った人は、自分だと分かっているはず。
本体あるべき「フクアリ劇場」は、罵声ではなく、今は出来ない声援と、歓喜に溢れたもの。
それを取り戻すために、一人一人が自らを省みて応援に集中しよう。
宜しくお願いします。