今季の集大成。意地のドロー。 2021 J2第41節 vs京都 △0-0
- 2021.12.01
- GAME REPORT
- 京都サンガ, 尹晶煥, 新井章太, 曺貴裁
2021/11/28(日)14:00
フクダ電子アリーナ
J2第41節
千葉 0(0-0,0-0)0 京都
<得点>
なし
J1復帰をあと一歩のところまで手繰り寄せた京都。
彼らは、来週残された、ホーム最終戦の事などまるで考えにないようだった。
試合前練習で全員が円陣を組み、その後ろには「HUNT3」と大書きされた幕、詰めかけた京都サポーター。積年の思いは痛いほどに分かる。
が、ここはフクアリ。我々もまた、その思いの途上。負ける訳にはいかなかった。
スタメンには前節の壱晟に代えて、守備に長けた小林。布石は打った。
14時キックオフ。
鎧袖一触。圧倒的なプレッシャーがジェフに襲い掛かる。
これまでの数試合とは全くレベルが違う。速さ、強さ、厳しさ。これが、J1に上がろうとするチームの力かと、まざまざと見せつけられた。まったく、ボールをキープする事が出来ない。前にボールを蹴らせてすらもらえない。後ろに戻しても、ボールの出しどころがない。
ブロックを作って守備を固めるジェフに対し、流動的に動く京都。常に相手の方の人数が多い錯覚に陥る。完全にジェフをハーフコートに押し込め、その中で連動した「狩り」を仕掛けて、波状攻撃で畳みかけ、殺意の籠ったシュートの雨を降らせる。
チームが組織として獰猛に連動する事に加え、圧倒的な「個」の力がある。
自由自在にピッチに君臨するウタカの存在だった。
彼は、ピッチのありとあらゆる場所に出没した。
ゴール前はもちろん、右にも、左にも開き、下がってボールを受け、時には自陣のコーナーポストにまで戻って守備にも参加する。強靭なフィジカルを存分に活かし、ラフなボールを収めに収めて、ハーフラインからでもドリブルで突貫し、一人でシュートを撃つことも、周りにボールを散らすことも出来る。
いったい、何人の京都と戦っているのか?
それが分からなくなるほど、スタンドで観戦している自分ですら、『飲み込まれそう』になっていた。
が、京都にアクシデントが起こる。
ウタカと同様に、「個」の力を持つ、ヨルディ・バイスがピッチに倒れ込んでいる。
いったん外に出て、自らの足が耐えられるのか確かめているが、明らかに気持ちに身体がついていけていないのが遠目にも分かった。結局、無念の交代。
彼が抜けても、京都の攻勢は変わらない。
とは言え、試合開始直後のペースを90分間継続することは、さすがに無理がある。
ジェフはガードを固めて、京都の猛攻に耐える。ほとんど組織を食い破られていたが、最後の最後では身体を張る。フリーで撃たれると思った刹那に末吉がスライディングでボールを蹴りだし、あるいは新井章太が最後の壁となって立ち塞がり、ゴールだけは許さない。
20分過ぎ、セットプレーをゴール前に放り込み、こぼれ球を繋いで、遠目からようやく1本目のシュートを放つ。
飲水で一息。前半残りの時間も、猛攻を凌ぎながら、反撃の目を探るものの、京都に穴と言う穴はない。明らかな劣勢ではあったが、無失点の時間が続くと、妙な心の余裕に気づいた。このチームは、元々守りのチーム。0-0でゲームが流れるなど「よくあること」だ。
この状況に焦りと、違和感を感じているのは、むしろ攻めながら得点を奪えない京都の方ではないのかと。
圧倒的な京都ペースのまま前半を終えたものの。
時間の経過とともに、少しずつだがジェフがボールを握る時間も生まれつつあった。
これは、ジェフペースでもあるのではないか。そんな期待感があった。
後半、傷んだ田口に代わり、壱晟が小林とドイスボランチを組む。
田口は、今のジェフにとって中盤の全権を担う司令塔。それだけに、交代はより状況を厳しくさせるのではないかと懸念したが、結論、それは杞憂に過ぎなかった。田口の穴を埋めるのではなく、壱晟は自らのプレーで、劣勢をひっくり返しにかかっていた。
徐々に京都の足が、嵐のような前半ほどではなくなってきた。
その時を待っていたジェフが、徐々にボールを握り始める。
交代策は早かった。65分、両翼を代え、さらにジョーカーとしてサウダーニャを投入。意外性と、自らフィニッシュまで持ち込む力を持つ完結性を持つ彼が、前がかりの京都の重心を確実に押し下げた。
リフレッシュされた両翼が、戻り切れないサイドを抉り、クロスを上げられるようになる。
並みの相手なら、形勢逆転まで持ち込める一手だった。
しかし、京都は依然としてウタカが健在だった。70分も過ぎようかと言うのに、キープ力も、突破力も衰えをみせない。アバウトにウタカ目掛けて放り込めば、確実にボールを収めて、展開をガラリと変えてみせてしまう。
真骨頂は73分。京都自陣から前線のウタカにボールが放り込まれると、ディフェンス3人に囲まれながらも、巧みに身体を入れ替えて、一瞬の隙をついて強烈なシュートを見舞ってみせた。決定的なシュートだったが、ここも新井章太が腕一本でセーブ。
攻めも攻めたり。守りも守ったり。
その直後には、今度はサウダーニャが、ペナルティエリアの外から、ゴール対角線を狙う、ドライブ回転のかかった強烈なミドルシュート。会心の一撃だったが、ボールはバーを叩く。
互いの攻守の切り替えが早く、試合の密度がさらに増す。
サウダーニャが倒されてFK、起き上がるとゴール裏を仰いで、腕を振り上げて煽る。
俄かに手拍子が大きくなる。屋根から音が降り注ぎ、茜色から紺色に空が染まりゆくなか、フクアリは「劇場」の片鱗を見せ始める。ジェフの時間帯がやってきた。その渦の中で、CKからソロモンが強烈なヘディングを見舞う。
が、これも、キーパーに阻まれてしまう。相手もまた必死だ。
そして、京都は昇格と言う目的を果たすために、狡猾ですらあった。
80分過ぎ、京都ベンチ前で突然起こった乱闘騒ぎは、見方によっては、「劇場」の空気を冷ますために、ある種の冷静さをもって仕組まれた出来事のように思えてならなかった。
試合が再開された時、フクアリの温度は冷やされ、そして京都はもう勝ちきろうとはしていなかった。引き分けてでも、昇格と言う「結果」を掴む。その為にチームが一つになっていた。
7分の長いアディショナルタイムの最終盤。
ジェフはCKに新井章太まで上げて、ここでの昇格を阻止するために、持てる力を出し切った。しかし、それでもなお、京都のゴールを割ることは出来なかった。
そして。タイムアップ。
京都の12年ぶりとなる、J1復帰が決まったのだった。
対戦相手がJ1への昇格を決める姿を見るのは、プレーオフで経験している。
京都の健闘を称える気持ちと、フクアリで見たくないものを目に焼き付けねばならない悔しさとが入り混じるが、今回は当事者ではない。京都との勝ち点差は、実に「20」これが、両軍の客観的な立ち位置なのだった。
昨年から二年間をかけ、ジェフはようやく土台が出来つつある。
一貫した方針もなく、迷走を続けた過去を振り返れば、これは大きな進歩だ。
しかし、試合後のセレモニーで、森本社長は「7合目」と口にしたが、そんなに生易しいものではないだろう。京都との勝ち点差、彼らが見せたサッカーの内容。来季J2に降格してくる4チーム、そして今季戦ったJ2の各クラブの一筋縄では無い強さ。しぶとさ。
来季に向けて、このままでは昇格に届かない。
まだまだ足りない。
悔しさとともに、それを強く感じる一戦だった。
ジェフは成長の途上にある。
足元をしっかり見据えて成長を続け、この日の光景を、今度は我々の歓喜として迎えて欲しい。
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