攻撃の為の守備を 2020 J2第6節 vs東京ヴェルディ ●1-2
- 2020.07.19
- GAME REPORT
- 山下敬大, 東京ヴェルディ
2020/07/18(土)19:00
フクダ電子アリーナ
J2第6節
千葉 1(0-1,1-1)2 東京V
<得点>
34分 東京V 25端戸(PK)
73分 千葉 24山下
78分 東京V 25端戸(16福村)
再開後4試合、2勝2敗。
勝敗は紙一重だった。
完封し、勝利した試合でも、相手にボールを持たれ、新井章太のファインセーブが無ければ逆の結果になっていただろうし、最少失点で敗れた試合も、守備陣の奮闘が無ければ、無得点のまま、複数失点で敗れていただろう。
今日も、負けるとすれば、
相手にボールを持たれ、ひたすら耐える展開だろうと予測した通りのゲームになった。
梅雨空のフクアリは雨が降ったり、止んだり。
ピッチ練習の頃に強くなった雨は、試合が始まる頃には小やみになり、空はぼんやりとピンク色に染まっていた。
アウェイで金沢を撃破して迎えたホーム。
ここまでフクアリは連敗。
今度こそは勝利をと、試合前から、監督、選手達も意識していたゲームだった。
スタメンは、前々節の栃木戦をベースにしたメンバー。
ただ、クレーベと、堀米。
キープレーヤーがベンチにも居ない。
コンディション不良だろうか。
代わりに、FWには川又が入り、左サイドには船山が入った。
船山は、選手交代に伴って、FW、右サイドとポジションを動かしながらプレーした。
サブには、前節活躍した、ソロモン、旭、見木らが控える。
対するヴェルディは、前節とほとんど変わらないメンバー。
元ジェフ勢が多い。
近藤こそメンバー外だったが、若狭、小池、そして遥也。
特に遥也は、あのカズが纏っていた「11」を背負う。
なんとも不思議な感じだ。
システムは、3-6-1。
ボールを繋ぐスタイルで、かつ攻撃的。
遥也がボランチを務めている事からも、そもそもそれは分かる。
テクニックを重視したメンバー構成は、往年の読売クラブの薫りを感じる。
ヴェルディで攻撃的なポジションを務めた、永井秀樹監督だけに、だろうか。
19時3分、キックオフ。
今日も制限ありの厳戒態勢。
市松模様のスタンドから、大きな拍手が沸き起こる。
ゲームは、戦前の予想通りに、攻めるヴェルディ、守るジェフの展開になった。
ボクシングに例えるなら、足を使ってパンチを受けない、かつ手数の多いヴェルディに、ガードを固く閉じて、一発を狙いに行くジェフと言う構図だ。
ヴェルディは、最初からラインを高く設定し、ボールを細かく繋いで、じりじりとジェフを自陣に押し込んでいく。
今日の審判、三上氏は、わりとファウルをよく取るタイプで、3分にはゴール左深くでFKを奪われる。8番藤本が蹴ったボールは、2番若狭がドンピシャで合わせるも、枠外。
その後も、ジェフ陣内で次々とセットプレーを得て畳みかけるヴェルディ。
11分には、ゴール正面のFKを、フェイントから再び藤本。
グラウンダーのボールは、新井章太も反応出来なかったが、右ポストを叩いて、難を逃れる。
ジェフも、回数は少ないながらも、増嶋のロングスローや、田口のCKなど、ヴェルディ同様にセットプレーからチャンスを得るも、決定機は無し。
15分、20分と経過しても、ペースはヴェルディ。
ジェフは、じっとガードを固めたままで、時折、カウンターが発動しかけるものの、ヴェルディの戻りが早く、チャンスの芽は未然に摘み取られてしまう。
そのヴェルディの中で、遥也はうまく噛み合っているようだった。
もともと、ジェフの中で遥也のようなテクニカルなタイプは突然変異のような存在だった。おそらく、移籍先のガンバや、山形でも、周囲とのリズムが少し異なっていたのだろう。ところが、ここヴェルディでは、同じようなリズムを持つ選手が多く、自然と溶け込んでいた。
遥也は、良いチームに移籍したのかも知れない。
輝きが、戻りつつあるようだった。
背番号「11」のプレーを時折目で追いながら、そんな事を考えていると、
ふいに混戦の中で笛が鳴った。
何が起こったのか分からなかったが、主審がスポットを指し示し、ジェフの選手たちが血相を変えている事で、PKだと分かった。が、後でDAZN組のジェフサポに、twitterで問いかけてみても、帰宅してから確認してみても、何がどう、PKなのかは分からなかった。
が、騒いだところで判定は覆えらない。
悔しいが、あり得る事と割り切るしかない。
キッカーは端戸。右隅に決められた。
今のジェフからすれば、絶対に与えてはならない先制点。
ただ、この失点までも、何度も、何度も、自陣で危ういセットプレーを与えていた。
「攻められ続ける」と言う事は、判定の正誤はともかく、失点の可能性を高めてしまう事は間違いない。
少なくとも、前半のジェフは、一方的に攻められるだけで、攻撃に転ずる事が出来なかった。
ただ耐えるだけの守備で終わってしまい、「攻撃の為の守備」は出来ていなかった。
唯一のビッグチャンスは、42分。
川又がダイレクトで右の米倉の前方スペースにボールを送り、米倉が右クロス。
中央から左に流れたボールを船山がシュートしたシーン、それだけだった。
0-1で前半が終了し、
後半開始時にジェフの選手交代は無し。
ヴェルディは2人の選手を交代。
追いつかなくてはならないジェフは、前半よりも攻撃的な姿勢を見せるものの、一向にシュートまで持ち込むことが出来ない。
守備から攻撃に切り替わった時、ボールを奪う位置が深すぎる上に、ほとんど全員が守備に参加してしまっていて、前に人が全然いない。必然的に「遅攻」となってしまい、ヴェルディが帰陣する余裕が十分ある状態だ。
これでは、なかなか相手を焦らせる事が出来ない。
ヴェルディは、前半同様、セットプレーでジェフを苦しめる。
52分には、後半から入った9番佐藤が、右足で素晴らしい弾道のFK。
クロスバーを叩き、何とか事なきを得る。
苦しい状況の中、1人、まったく別次元のプレーをジェフで見せていたのが田口。
視野の広さが圧倒的で、かつての兵働を彷彿とさせる。
長短のパスを操ってヴェルディの守備を左右に揺さぶり、そうかと思えば、相手にとって致命的な縦パスをグサリと突き刺してくる。
が、それが、噛み合わずに孤軍奮闘と映ってしまう。
60分、ジェフの選手交代。
川又に代え、為田。
壱晟に代え、見木。
この交代で、船山がFWへ位置を変える。
川又は、ボールさえ入れば仕事はするが、
今日は、彼までほとんどボールが来なかった。
歯痒かったろう。
交代で入った見木は、ここのところすっかりボランチの位置だ。
ただ、守備的な印象がほとんどない。
彼が入ると、ボランチが横関係から、縦関係になったように感じる。
時間が進み、72分。
ジェフが同点に追いつく。
手拍子ではなく、拍手の中、増嶋のロングスローを米倉が中央へ逸らし、山下が頭で合わせる。さらにそのボールを船山がボレーでシュートし、こぼれ球に再び山下。
しっかりと詰めて、今季2点目。
フクアリのサポの前で、同点弾を決めてみせた。
この日一番の拍手が、フクアリを包み、
一気に逆転へと言う空気で、スタンドは盛り上がった。
が、この時間でも、攻めるヴェルディ、守るジェフと言う試合を遠した展開は変わっていなかった。ヴェルディのラインは高く、素早く、正確にボールを組み立てて来る。
78分、中央から縦、そして左へとゆっくりと展開。ジェフはこの時なぜか田口以外が棒立ちで、ボールを見送ってしまっていた。その時、中央でゴール前に駆け込む、端戸選手が全くのフリーになってしまった。増嶋が慌てて身体を寄せるも、身体を伸ばして頭に当てたボールは、新井章太の頭の上をふわりと越える、絶妙なループに。
一瞬の緩み。
再びリードを奪われてしまう。
ジェフは、81分に船山に代えてソロモンを投入。
さらに、旭、安田を送り込む。
85分を過ぎて、増嶋のロングスロー、
田坂のクロスに、ソロモンのヘディングシュート、
為田のクロスに、田口がバイシクルで合わせるなど、反撃を試みるも、得点は生まれず。
90+5分の正面のFKも田口は直接狙わず、味方に合わせる事を選択。
最後の守りを固めるヴェルディを崩す事は叶わず、そのまま1-2、タイムアップとなってしまった。
これで、フクアリでは三連敗だ。
文中に書いたように、ジェフは、確かに守備力は向上した。
それは、去年までに比べて大きな進歩だが、まだ、攻撃の為の守備が出来ていない。
守備が守備で終わってしまい、守備と攻撃が表裏一体のセットになっていない。
今も、奪った後、サイドを使ってカウンターを仕掛けようという意図は見える。
が、まだカウンターに参加している選手の枚数が少なく、パスの選択肢も少なく、相手に容易に読まれてしまうか、各個撃破され、あるいは戻さざるを得なくなっている。
奪ったら攻撃、奪ったら攻撃。
シュートカウンターの意識を植え付けて、手数を多くしていかなくては、いつまで経っても当たれば大きいカウンターパンチ狙いで、相手のラッシュをひたすら耐える選択肢しかなくなってしまう。
大物食いには良いかもしれないが、守備機会と、攻撃機会のバランスが極端に悪ければ、勝ち星は伸びないだろう。
ホームで既に3つの黒星は本当に痛いが、
これは新しいサッカーでステップアップするための生みの苦しみと考えるべきだろう。
イメージするのは、2001年、リーグを席巻した、
ベルデニック監督のショートカウンター。
あのサッカーのような、守備と攻撃が表裏一体となったサッカーへの進化を期待したい。
次絶対勝とう‼️
俺らはまだまだあんなもんじゃない‼️ https://t.co/fe6Rqsy9jY— 新井 章太 (@ArashotA34) July 19, 2020
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