新シーズンへの助走 第25回ちばぎんカップ vs柏 ●0-2

新シーズンへの助走 第25回ちばぎんカップ vs柏 ●0-2

2020/02/09(日)13:05
フクダ電子アリーナ
第25回ちばぎんカップ
千葉 0(0-2,0-0)2 柏

<得点>
7分 柏 14オルンガ
11分 柏 9クリスティアーノ

ジェフ公式
レイソル公式

25回目を迎える「ちばぎんカップ」。
リティの引退試合を兼ねて始まったこのカップ戦も四半世紀。
その間、ずっとサポートを続けて来て下さった、千葉銀行様をはじめ、スポンサー各社の皆様には、心から御礼申し上げたい。

ジェフにとっては、尹晶煥監督のサッカーのお披露目だったが、
試合内容、結果共に、改めて「柏強し」を印象付けるゲームになった。
少なくともネルシーニョ監督が指揮を執る間は、この強さは続くだろう。

彼がすんなり日本代表の指揮官になっていたら。
どんな結果が出ていたのだろう。
今更ながら、考えを巡らせてしまった。


快晴のフクアリ。
冬らしい寒さに、フクアリらしい強い風。
事前搬入で中に入ると、素晴らしく整備された青々と輝く芝と、新しくなったビジョン。
また今年も新しいシーズンが始まるのだなと気持ちが高まる。


ビジョンは、左側の時刻表示の部分まで全面が映像を表示出来るよう広くなり、明るく、高精細になっていた。
これまでは、表示が粗くて、文字が読み取り辛い事もあったけれども、これならばくっきり読める。
画面下の企業名は、「JFEスチール」から「フクダ電子」に。


さて、スタメン。
予想と異なっていたのは、ディフェンスライン。
左には下平ではなく安田。センターバックには、新加入のチャン・ミンギュ。
右の中盤には、負傷の癒えた田坂が名を連ねた。

ボランチには、主将を任されたアンドリューと、新加入の田口。
ドイスボランチだが、試合中はどちらかが前に出て、ダイヤモンド型になる事もしばしばだった。

今年のテーマは、「リフォーム」「サバイバル」だと、個人的には考えている。
昨年の戦力が多く残り、持駒でどれだけ味付けを変え、積み上げる事が出来るのか。
そして、尹晶煥新監督のサッカーに適応する選手として、この一年間で誰が残るのか。

リザーブを見渡しても、ゲリア、アラン、岡野、旭、浩平、山下、寿人と言った面々が外れている。
チーム内の争いは、本当に熾烈だ。


試合前に注目したポイントは守備、そしてボールを奪ってからの攻撃への切り替えだった。

13:05のキックオフ。
ジェフは、コンパクトなラインを形成。
ディフェンス、中盤、前線と、綺麗な3ラインがゴール裏からでもわかる。
オーソドックスな4-4-2のゾーンでプレスをかけ、主導権を握りにかかった。

悪くない試合の入りだった。
出来れば、やれる手応えを掴んで自信にしたかったが、それ以上に柏の仕上がりが良過ぎた。
試合後、ネルシーニョ監督が「組織的に戦えた」と満足気だったように、柏はジェフのプレスを事も無げにいなすと、鍛え上げた連携力と、圧倒的な「個」の力で、畳みかける。

7分、少し引いていた江坂にプレスがかからない。
すると一瞬のスキを逃さず、ジェフのディフェンスラインをど真ん中で分断する縦パスをオルンガに供給。
新井(一)が触れず、チャンの手前、ちょうどオルンガの足元への素晴らしいボールを送り込む。
あっという前に1対1。新井(章)の位置を見定めて、やさしく流し込む。
オルンガ、でかい、強い、速いだけでなく、足元も正確で、意外と繊細。

そして、11分には、左サイドにクリスティアーノが進出。
安田、チャンが挟み、さらにアンドリューが援護に入るものの、チャンを振り切り、身体を入れ替えて密集を突破。
1人でペナルティエリアに切れ込み、角度の無いところから、逆サイドネットに突き刺す、まさに「個」の力を見せつけるゴール。
チャンにとっては、2失点とも悔しいだろうが、リーグ戦前にプロのレベルを体感する機会になった。

早々に2点を先取した柏。
余裕が生まれたのか、より連携がスムースになり、反対にジェフのプレスは機能しなくなっていく。
ジェフが悪いというより、柏がとにかく良い。シンプルにパスを繋ぎつつ、縦への切り替えが速く、どこにスペースが出来るのかが共有されている。何気ないシンプルなサイドチェンジが、ジェフのプレスを無効化させ、ジェフがボールを持って攻め込もうとすれば、ヒシャルジソンをはじめ、各選手が間髪入れず、潰しに来る。

しかも、ただ奪うだけではなくて、そのままドリブルで十数メートル突き進む。
その十数メートル前に出る間に、周りの選手がスペースに走りこんで、次のパスコースを作り出す。
その繰り返しを当たり前の事として繰り返す。
重たいボディブローを食らい続けているようで、彼らの強さを感じざるを得なかった。

対するジェフは、ボールを奪ってからの「繋ぎ」が良くなかった。
柏の圧力が強いにせよ、もう少し落ち着く事が出来たはずだった。
が、中盤のアンドリュー、田口、田坂、堀米、いずれもが、焦ってしまっていた。
ミスパスや、プレッシャーが明らかにかかっている選手に無理に通そうとしてしてしまい、狙われ、簡単に柏にボールを奪われてしまう。

カウンター、そしてサイドアタックを狙う意図はわかるが、堀米、ヨネがスペースで受けられない。
ならばと、縦パスでクレーベに通そうとするも、柏につぶされ、キープできない。
孤立気味で、船山との補完関係が作れず、シュートをほとんど撃つことが出来なかった。
決定機は作れず、前半は終了。


後半に入ると、ややジェフが持ち直す。

ポジションを見ると、後半始まってすぐの時間帯は、アンドリューが下がって田口が前に出てトップ下の位置に。
ダイヤモンド型の中盤になっていた。逆にアンドリューが出ている事も、2人が並んでいることもあり、前半に比べて2人の関係性が少し整理されたように感じた。パスが少し回るようになり、それにつれてジェフの攻撃機会も作られていった。

突破口を開こうと、気を吐いたのは左の堀米。
対面の峻希に仕掛け、強引に抜いてクロスを供給する。
クレーベの頭に合わせるも枠外。
さらに、クロスから最後は田口がミドルを放つも、GK中村が片手一本でファインセーブ。

昨年まで、左は為田と下平の『二枚刃』。
しかも、クレーベが合わせやすいアーリークロスを供給していたのは下平だったが、この日は安田が先発。
対クリスティアーノと言うこともあり、ほとんど彼からのクロスは無し。
攻撃面では迫力に欠けた。


得点が奪えないジェフは、61分に新加入の川又を船山に代えて投入。
クロスに合わせられるターゲットを増やしてゴールを狙う。

さらに、67分には、見木と為田を投入して、中盤の両サイドをフレッシュな選手に切り替える。
より縦に速く攻めようとした意図だったと思うが、逆に攻撃はややペースダウン。
堀米は低い位置でボールを持っても、自分で前まで運べるのに対して、為田は前が詰まっていると戻しがち。
スペースに彼が欲しいボールが、なかなか供給されなかった。

しかも、85分には、その交代出場した為田が交代。
歩くことは出来ていたが、ベンチの選手に肩を叩かれながら、無念そうにピッチを去ってしまった。
大きな怪我無くやれていただけに、チームとしてもこれは痛い。

その為田に代わって、下平が左SBに投入されると、安田が右SBに、米倉が中盤の右に、見木が中盤の左に。
反時計回りにポジションをチェンジ。
このあたりの柔軟性は、昨年も同じメンバーでプレーしているメリットだ。

その後、残念な事に、レイソルのGK中村も怪我で退場。
お互い、リーグに向けて怪我だけは避けたかっただけに、終盤の怪我人は残念でならなかった。
ゲームは、そのまま0-2でレイソルが余裕を持って逃げ切り。
対戦成績は、レイソルの16勝、ジェフの9勝となった。
MVPは江坂。MIPはアンドリュー。

後半のジェフは、前半のようにバタつくシーンもあまりなく、五分とは言わないまでも、4:6くらいの展開までは持ち直す事が出来ていた。被決定機は、72分にFKを横に流して峻希が放ちポストを叩いた、強烈なミドルシュートくらい。

攻撃は、前述の堀米の突破とクロスが頼み。
いくつかあったセットプレーのチャンスも、GK中村の好守もあって、得点には繋がらなかった。
キッカーはFKを主に田口。CKは堀米が蹴ることが多かった。



ゲームを終えて、整備が進んでいると言われていた守備は、前評判通りかなり形になっていた。
しっかりとブロックを作って相手の攻撃を受け止め、奪った後に素早くカウンターを仕掛けようという「意図」は見える。

撃たれたシュートは、前半5本。後半3本。
後半の3本のうち2本は、セットプレーからのもの。流れの中からシュートは1本に抑えた。
思い返してみて欲しい。昨年、柏とのリーグ戦では、アウェイで17本、ホームで19本のシュートを撃ち込まれている。それからすれば、短期間で守備の改善は大きく進んでいると言えるのではないだろうか。

一方で足りないのは「激しさ」。ユニフォームの猛犬のような、強烈なプレスを期待していたが、柏を慌てさせるような強度は無かった。特に、ボランチの2人、とりわけアンドリューには、チーム全体を鼓舞するような、泥臭く、激しいプレーを求めたい。彼の位置で守備のスイッチが入らなくては、チーム全体に怖さが出て来ない。常に目立たなければ駄目だ。
柏で言えば、ヒシャルジソンのように、ボールを刈り取り、自らドリブルで前に運んで突破口を開く、圧倒的な存在感が欲しい。

そして、大きな課題は攻撃。
ここまでのTGの結果を通じてみても、得点がなかなか奪えていない。
守備に対して整備が進んでいないのは明らか。

「堅守速攻」を目指しているとすれば、後ろに重心がかかり過ぎで走りが足りない。
繰り返しになるが、ボランチの位置で、奪い、前に運ぶ、パスを捌くことが出来なければ、攻める形が見えてこない。

また、前線のクレーベが尹晶煥監督のサッカーにハマるかが大きなポイントだったが、この試合に関して言えば完全に孤立してしまっていた。ファーストディフェンダーとしての役割は果たせず、周囲の援護の無い厳しい状況でしかボールを受けられず、クロスも上がって来ない。シュートは前後半1本ずつの2本のみ。
試合前のシュート練習を見ていても、コンディションは良いように見える。
それだけに、シュートを撃てないもどかしさをプレーの端々から感じた。

クレーベをどうチームの中で活かすのか、どう得点を奪うかは、開幕に向けた積み残しの課題になった。


いずれにせよ、現時点で「出来たこと」「出来ないこと」が明確にわかる、PSMとして意味ある試合になったのではないだろうか。
柏は、昨年のJ2優勝チーム。チャンが、コメントしていたように、こう言う相手に勝っていかなければ、J1に上がって行く事は出来ない。
しかし、ジェフは、昨年17位のチーム。これもまた事実だ。選手も大きく入れ替えてはいない。良くなって来てはいる。しかし、一足飛びに強くなることは出来ない。

今は、新しいサッカーの土台を作っている段階。
一歩一歩足元を確かめ、チームの成長を見守り、応援していかなくては。
チーム作りに時間がかかることは、我々サポーターが良く分かっているはずだ。

「昇格」は目標としては掲げても、今年のジェフは何をもって成功、あるいは成長とみなすのか。
新しいサッカーをチームに浸透させること、尹晶煥監督のサッカーに合う選手を競争の中で見出すこと、世代交代を進めること、やらなければならない事はたくさんある。そのことを理解しながら、チームを見守り、同時に目の前の一戦に勝つために集中する。

両方の視点を持って、チームが正しい方向へ向かうよう、応援していきたい。

今年も長いシーズンが始まる。
昨年のような苦しい思いはもうたくさんだ。
チームの成長が感じられる良い一年になるよう、心から願っている。

<お知らせ>
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