勇人への期待

勇人への期待

1月22日、勇人の新しいポジションが発表になった。

「クラブユナイテッドオフィサー(CLUB UNITED OFFICER)」

初めて聞くこの役職は、「社長付として多岐にわたるクラブ内の組織同士や、クラブとクラブを応援してくださる皆さまをユナイテッド(結束)させ、クラブ全体が一丸となって活動するための推進役としての機能を果たします。」と説明されている。

その活動の範囲は、主な業務として挙げられているものだけでも、

・トップチームの強化に関する業務
・アカデミーの強化に関する業務
・スクール運営や子供たちの指導
・社長付き業務
・ホームタウン活動に関する業務
・スポンサー営業に関する業務
・クラブ広報業務 等

いわば、「なんでも屋」的なポジション。
これまで勇人が培った経験と人脈を駆使して、チームの強化に繋がる事であれば何でもやっていく、そして走りながら勇人のポジションを作っていく、とも受け取れる。

正直、ジェフと言うクラブが、この新しいポジションを作った事には驚きを覚えている。
なぜなら、このクラブは、「意見する」人間を冷遇する傾向があったからだ。
遡れば、下川健一。他にも中西永輔、巻誠一郎。
チームの顔と言える選手になるほど、クラブの将来に携わる事は出来なかった。

それだけに、「意見をする」と明言している勇人をチームに残す。しかも、「意見出来る」ポジションを新たに作ると言う判断は、それ自体が、チームが内側から、何らかの変化を起こそうとしている兆しと受け取る事が出来るかも知れない。

だからこそ、勇人にかかる期待は大きい。
それこそ、ありとあらゆる期待ーーー言葉を変えれば、これまでチームに対して蓄積されていた不満ーーーが、彼のもとに集まって来ることにもなりかねないだろう。

漠然とした期待と、伝えどころのない不満。
それらを全部飲み込んで、勇人の中で消化し、新しいジェフが『どうあるべきか』を、勇人の言葉で伝えていく。
あたかも選手時代と同じように、チーム全体のボランチとして、ジェフに関わる『みんな』の考え方が同じ矢印の方向を向けるように舵取りすること。それが、これから彼が求められる役割になるのではないだろうか。

そして、それを実行しようとしたとき、彼自身、クラブの中で意見の衝突が起こる事を覚悟している節がある。
昨年末のエルゴラのロングインタビューでも、自身がそう話しているし、ジェフのOBでもあり、昨年京都の監督を務めた、中田一三氏も自身のyoutubeチャンネルの中で、勇人がクラブとぶつかる時、周囲が支えて欲しいと話している。


(佐藤勇人インタビュー エルゴラッソ 2019/12/27-2020/1/5号(No.2273))

※このエルゴラのロングインタビューは必読。
引退直後、2019年11月27日の取材時点での、勇人の考えが網羅されている。
バックナンバーを取り寄せしてでも一読を。

※引退後の勇人は、一三さんだけでなく、札幌社長のノノさんだったり、ジェフOBともコンタクトを取っている。

勇人の考えを受け止め、受け容れ、形に出来るようなクラブに、ジェフは変わりつつあるのだろうか。
内情を伺い知る事は難しいが、思いがけないところからこんな声があった。

バスケ、千葉ジェッツの島田会長のtweet。
あくまで「経営」の部分の話としてだが、ジェフの森本新社長に高い評価をされている。
そして、『クラブカルチャーを変える』かもしれないという評は、勇人の考えとオーバーラップする。

ジェフは、これまで親会社から派遣された門外漢の社長が、任期毎に交代するため、クラブとして一貫した方針を持つことが出来なかった。その度に、GMやTDといった強化責任者や、監督、選手、そしてサッカーの中身までも変わり、何一つ積み上げられなかった。

けれども、もしかしたら、この「クラブユナイテッドオフィサー(CLUB UNITED OFFICER)」と言うポジションが、その積年の問題の根っこを変える事になり得るのかもしれない。

もしも、勇人が、これから先何年も、長い時間をかけて、
このクラブが大切にすべき「芯」を、「軸」を、身をもって示し、土台を作っていってくれるのなら。
ジェフは、ジェフとしてのアイデンティティを宿し、自立する事が出来るに違いない。

そのために、これからの勇人の一挙手一投足を見守ってゆきたいし、
サポーターの一人一人も、「あるべきジェフの姿」をそれぞれに描いて、
クラブが、勇人が、困難に直面した時に、今まで以上に支えて欲しいと思う。

佐藤勇人のこれからに期待したい。