全てが有耶無耶の最終戦。思いは引き継がれるか。 第42節 vs栃木SC ●0-1
- 2019.11.28
- GAME REPORT
- 栃木SC
2019/11/24(日)14:00
フクダ電子アリーナ
J2第42節
千葉 0(0-0,0-1)1 栃木
<得点>
71分 栃木 30田代
栃木SCの関係者の皆さん、J2残留おめでとうございます。
「最後まで諦めない」と言う言葉は、2019年においては栃木にこそ相応しいものでした。
この一戦に勝利する為に全てを賭けたチームと、
もうシーズンが終了していたチームとの対戦。
勝利に対する想いの強さが、あのゴールを生み、
他会場の結果をも呼び込んだのだと思います。
2019年最終戦。
ホーム・フクダ電子アリーナ。
20年の現役生活を終える勇人のためと、クラブOBが集い、コメントを寄せたこの試合。
違和感を感じずにはいられなかった。
(左)イリアン・ストヤノフ氏 (右)鈴木隆行氏
(元監督 ズデンコ・ベルデニック氏)
まだ、れっきとしたレギュラーシーズン。
それも、過去最低の成績だ。
にも関わらず、順位も、勝ち点も関係ない、イベントの引退試合のような空気。
そうでもしなければ、『興行』であり、『売り上げ』を立てなければならない、プロサッカーの試合。
波風を立たせるより、穏便に終わらせたい、終わらせなければならない思惑。
そこには、勝負へのストイックさは感じられなかった。
「勝つぞ!」と念じながらも、
「負けるな、この試合」
そう感じてしまっている自分がいた。
何のためにこの試合を戦うのか、見出せないまま、ビッグフラッグを片付けてゴール裏に戻った。
スタメン。
勇人、寿人は先発を外れた。
勇人に関しては、江尻監督はスタメンで使いたい考えだったようだが、コンディションが残念ながら整いきらなかったようだ。
ただ、直近数節のプレーを見れば、小島先発は妥当だったろう。
右サイドには、見木。
堀米ではなく、彼を抜擢したところに、監督の期待の大きさが伺える。
対する栃木。
ここまで2勝1分で直近の3試合を終え、自力残留に向けてスパートをかけている。
オーソドックスな4-4-2の布陣。
枝村、大崎といった力のある中盤。
前線には、ヘニキと榊がプレス役として配され、
勝負どころに備えて、リザーブには大黒が控える。
キックオフ。
ホームでの勝利を目指し、攻勢をかけるジェフ。
序盤は良かった。10分過ぎ、見木が自ら仕掛けて、左足で強烈なミドル。
思い切りの良いプレーでスタンドを沸かせる。
その後もボールキープは圧倒的にジェフで、栃木はなかなか攻撃が仕掛けられない。
いや、仕掛けてこない。しっかりとブロックを作り、ジェフの強みを潰しに来ている。
両翼にはクロスを上げさせないように複数でマークがつき、中央のクレーベにも「ここさえ押さえてしまえば」と言うかのように、挟み込んでボールを収めさせない。リトリートする為にボールを戻せば、ヘニキ、榊が、所かまわず追いかけてくる。フィジカルコンタクトを厭わないヘニキに、下平がつっかけられ、いら立つ場面もあった。
得点を奪って、勝たなくてはならないのに、守りを固める栃木。
固い塹壕に何度も突撃を繰り返すうちに、ジェフは消耗し、攻め手が分からなくなり、機能不全に陥りつつあった。
迎えた後半、今季最後の円陣ダッシュ。
このメンバーで戦うのも、これが最後の45分間だ。
後半も先に仕掛けたのはジェフだった。
封鎖されたサイドをこじ開けてクロスを上げ、クレーベ、船山に合わせようと試みる。
あるいは、セットプレーから米倉のヘッド。新井も、「あと一歩」のところまでボールに突っ込む。
そして、クレーベが、マーカーを剥がし。抜け出して放ったシュートは、GK川田が指先で弾き出してしまう。
この試合でも、「ここで決めきれていれば」、勝てた展開だった。
しかし、残留に賭ける栃木の気迫がそうさせたのか、シュートは枠を外れ、あるいは届かず、キーパーの必死のセーブにも遭って、ゴールを割ることがどうしても出来ない。
じわりと時間が過ぎる。
65分過ぎ、エベルトが足を痛め、交代を余儀なくされる。
ここで、エベルトに代えて増嶋。
さらに、見木に代えて勇人が投入される。
スタンドから大きな歓声。
船山が勇人の腕にキャプテンマークを巻き付け、さあ、いくぞとフクアリの空気が熱を帯びる。
ほとんど同時に栃木も動く。榊に代えて大黒。
試合後、西部さんの「犬の生活」や、twitterの投稿のいくつかで、このゲームの試合展開を2012年の国立でのプレーオフ・大分戦に重ねる投稿があった。あの時の大分の監督が田坂さん。そして、耐えに耐えた大分が、終盤に投入したのがタケ。その役割を担ったのが、大黒だったと。
『勝負どころ』と田坂監督がみた、この交代を号令に、これまで守りに徹していた栃木が攻勢に出る。
交代から2分後、セットプレーからの一連の流れ。右からのクロスを、攻め残っていた田代が、オフサイド気味ながら頭でねじ込んで均衡を崩す。揺れる、栃木のスタンド。まさに、この一撃に賭けた、栃木の残留への気持ちの込められたゴールだった。
ホームで負けられないジェフは、ここから遮二無二なって攻める。
しかし、ボディコンタクトも時間稼ぎも厭わない、捨て身の栃木を崩せない。
82分に、小島に代えて寿人を投入。
が、このチームは、今年最後まで寿人を活かすことが出来なかった。
前線で、俺にボールをよこせと駆け引きするが、そこにボールは出てこない。
はじき返されたボールに勇人が必死に食らいつき、他の選手たちもゴールに迫るものの、生きるか、死ぬかの瀬戸際にいる栃木を崩すことは最後まで出来なかった。
試合終了。
今季、何度目のフクアリでの敗戦だったろう。
最後も連敗。負け慣れ過ぎてしまっていた。
栃木のJ2残留決定は、他会場の結果次第だった。
しばらくして、ひときわ大きな歓声がアウェイ側から起こる。
鹿児島が福岡に敗れ、栃木の残留が決まったのだった。
ジェフサポからも、栃木の健闘に拍手が起こった。
ああ、あの時のスタンドは、「こう」見えていたのかと、ぼんやり栃木の様子をみやっていた。
ここは、フクアリ。ジェフのホームであるというのに。
シーズン終了のセレモニー。
社長代行の穐山取締役が、挨拶を行う。
その後ろで、目を閉じて何かを耐え忍ぶような江尻監督がいたたまれなかった。
結局、セレモニーでは、監督からも、GMからも言葉を発する時間は設けられず、
選手スタッフの場内一周も、その後に勇人の引退セレモニーが控えていた事もあってだろうか。選手たちの隊列もてんでバラバラで、ゴール裏ではスタンドに近寄ろうともせず、ピッチと、スタンドの距離がとても遠く感じた。
勇人の引退セレモニーは、素晴らしいものだった。
おそらく、ここまでの待遇で見送られる選手は、自分が生きている内には、出てこないのではないだろうか。
クラブ側の演出も、サポーターの有志が作り上げた、彼の為だけの大きな幕も。
オシム元監督からサプライズのメッセージが届きました。スタジアムで見ることができなかった方のために、こちらにもお届けします!#jefunited #ジェフ千葉 #佐藤勇人 #引退セレモニー #オシム #Mrユート @satoyuto_7 pic.twitter.com/rsoIoHetE7
— ジェフユナイテッド市原・千葉(公式) (@jef_united) November 24, 2019
「しっかりとクラブが進むべき道を自分が作っていきたい。自分にしかできないことがジェフにはあると思っている。」
セレモニーの様子はDAZNで全編ご覧いただけます🎥#jefunited #ジェフ千葉 #佐藤勇人 #引退セレモニー @satoyuto_7 @DAZN #DAZN pic.twitter.com/r0fQJXfkUt— ジェフユナイテッド市原・千葉(公式) (@jef_united) November 24, 2019
が、何よりも、勇人がゴール裏で語った言葉こそが、これから先の希望になるものだった。
20年。勇人がユースからトップに上がり、今日引退を迎えるまで。
それは自分のジェフサポとしての人生ともほぼ重なる。
紆余曲折の20年を経て、勇人が、悩み、考え、挫折も味わいながら、自らの中に、あるべきジェフの未来を描いている事に深い感慨を覚えた。
これまでに引退してきた他の選手たちと同じく。
何とかして、勇人とはJ1へ戻りたかった。
そして、江尻監督とJ1へ戻りたかった。
セレモニーが全て終わった後、ゴール裏で謝罪をした江尻監督。
準備万端の状態で、二度目の指揮を執って貰えなかった事が悔しい。
こんな謝罪をする江尻監督を見たくはなかった。
笑顔の江尻監督を、胴上げしたかった。
その江尻監督を担ぎ上げた高橋GMは、結局、この最終戦でも語ることはなかった。残念でならない。
1シーズン丸々、顔も見せなければ、言葉を発さない責任者の下で、クラブは一つになれるのだろうか。
彼と、「共に戦っている」という感覚は、まったくない。
その日の夜には、新監督の内定が発表された。
このクラブはまた、反省も何もないままに、すべてを有耶無耶にして来季への歩みを始めてしまうのだろうか。
2019年シーズンが終わる。
今季は一体何だったのか。
積み上げは無いに等しく「更地」と寿人は表現した。
J3降格目前のクラブ最低の17位。
その現実から目を背けては、来季はより厳しい結果になるだろう。
これまでの路線の継承もあやふやのまま。
ジェフの「芯」は何なのか。
それ定めずに仮に結果が出ても、監督がまた変われば容易に「更地」に戻ってしまうだろう。
クラブとしての「芯」を定め、「目標」を定め、それをジェフに携わる人たちに詳らかにし、クラブの考えを応援してほしいと、今こそ立ち止まって訴えるべきだろう。
それをやらずに走りだせば、どこかでまた歪みがたまってしまう。
勇人の思い、江尻監督の無念、無駄にしないためにも、クラブとして土台作りに時間をかけて欲しい。
必要なのは、問題を有耶無耶にせず、苦しい現実と正面から向き合うことだ。
ジェフは、一つの企業には違いない。
だが、同時にこのフクアリに集う、みんなのものであるはずだ。
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