「似た者同士」のスコアレスドロー 第40節 vs東京ヴェルディ △0-0

「似た者同士」のスコアレスドロー 第40節 vs東京ヴェルディ △0-0

2019/11/10(日)15:00
フクダ電子アリーナ
J2第40節
千葉 0(0-0,0-0)0 東京V

<得点>
なし

ジェフ公式
Jリーグ公式

ハーフタイム。
21位の栃木が大宮と引き分け、ひっそりとJ2残留が決まった。
数えて40節。ようやく、降格の恐怖から逃れられた瞬間だった。

快晴のフクアリ。
9月、10月と雨の多い日が続いていた事もあり、雲ひとつ無いのはしばらくぶりだ。
前節、船山の活躍もあって金沢に勝利し、ようやくJ2残留への道筋が見えたジェフ。
この試合で勝ち点1でも積み増せば、自力で降格の危機を免れる。
ただし、何も決まってはいない。
試合前、江尻監督も、気を引き締め直して臨んでいた。

スタメン。
勝利した前節と全く変わらないメンバー。
右サイドのアランは、古巣戦となる。
サブには勇人が復帰し、旭がメンバー外となった。

対するヴェルディ。
スタメンには若狭、小池、サブには近藤と、元ジェフ組もしっかりと帯同。
特に、小池は先日の試合でハットトリック。絶好調、要警戒だ。

監督を抜かれ、選手を抜かれ、厳しいシーズンであったと思う。
上がれなかったが、昨年プレーオフの劇的な戦いぶりも記憶に新しい。
J2で同じように苦労する様には、親近感のようなものを覚えなくも無い。

そして、戦う度に着実に増えていく緑のサポーター。
一番苦しい時期にチームを見捨てなかったサポの地道な努力が、着実に実を結んでいる証左だろう。
味スタで見かける、ホームタウンの市章の横断幕や、スポンサーへの感謝は、チームを存続させるための日々の努力。
それを継続しているサポには尊敬を禁じ得ない。

前半、出だしから積極的に出たのはジェフ。
ボールを繋いでくるヴェルディに対して、インタセプトしてカウンターを仕掛けるシーンを何度も作る。

試合後、船山が、
『前半から何度もボールを奪うことはできたけれど、狙いどころがはっきりしていたというより、それぞれの局面で選手個々の力で奪ったという感じだったと思います。』
と語っていたことから、システマティックに守備がハマっていたと言うより、
ヴェルディのパスがジェフの選手の守備範囲内に引っ掛かっていたのだろう。

いずれにせよ、ボールを高い位置で奪い、そこから前線のクレーベを基点に、両翼へ展開してチャンスを作り出す。
4分、船山のチェイシングからクレーベ。決定機ではあったものの、枠の外。
さらに、クレーベ⇔アランのコンビネーションが良く、あと一歩でゴールと言うシーンを作り、畳み掛ける。しかし、東京VのGK上福元が立ちはだかり、ゴールを奪う事が出来ない。

やや厳しい状況でもシュートを狙っていく今日のジェフ。
さらに両サイドからクロスボールをクレーベ目掛けて放り込むも、悉く精度を欠いて、上福元が広げた両手に次々とボールが収まってく。

一方のヴェルディも、チャンスが無かったわけではない。
右サイド小池がフリーで優也と1対1の状況になりかけながらも、シュートではなく、パスを選択。
元ジェフの選手だから、と言うわけではないだろうが、ヴェルディ、肝心な場面でシュートを選ばないシーンが散見され、まるでジェフを見ているかのようだった。だんだん、梶川のプレーが浩平に、佐藤優平の髪型とキャプテンマークが船山のようにも見えてきて、煮え切らない展開とあいまって、「似た者」が戦っているように思えてきてしまった。

両チーム、チャンスはあるものの、決められない。
ジェフは、試合途中でクレーベが頭を負傷したあたりから、勢いが削がれ、それまで切れのある動きを見せてくれていたアランが負傷で退場して堀米に代わるアクシデントもあり、チーム全体が流れを作りきれなかった。
(それでも、若狭にクリアされた堀米の決定的なシュートもあった)

劣勢に見えるかのヴェルディは、小池が決定機に絡み、
前半終了間際には、セットプレーを得て、平選手のヘッドがすんでのところで枠を外れるピンチも。
お互い、ミス絡みで決定機を得、ゴールへの最短ルートよりも、一つ手間をかけてしまうもどかしさ。
あと一歩前へ、それを期待して後半へ。

(その後半の開始を待っている間に、栃木の引き分け、ジェフのJ2確定が周りの仲間の声で、伝わって来ていた。)

選手達に、ハーフタイムでJ2残留確定が伝えられれていたかは分からないが、
恐らく伝えられてはいなかったのではないかと思う。
選手達は、「勝ちに来ていた」。

後半も、数々の惜しいシーンがあり、また危ないシーンも何度も作られた。
目まぐるしい展開だった。
その中でも、ワンプレーを挙げるとするなら、75分のヨネがダイビングヘッド。
身体ごと叩きつけたプレーには、何としてもホームゲームで勝ちたい。
自分達の力でケリをつけたい、強い想いがこもっていた。

堀米、船山のシュート、コーナーキックからエベルトのヘッド。。。
枠に行かず、あるいは上福元の正面をつき、攻めども、攻めども、点が入らないもどかしさ。
一方のヴェルディも、梶川や、小池が決定機を決めきれなかった。
これだから、両軍とも、この順位にいてしまうのだろう。
「気持ち」は感じても、フィニッシュが決まらない。

ジェフは、75分に浩平に代えて勇人が途中出場。
すぐに船山がキャプテンマークを手渡す。
引退まで、最後の3試合。
近づく別れを惜しみ、勇人のチャントが日の暮れかけたフクアリに響く。

途中出場して間もなく、相手選手と接触して頭を切る怪我を負ってしまうも、応急手当を受け再びピッチに戻る勇人。その闘志に応え、有終の美を飾らせようと、再び攻撃にスイッチが入る。堀米、為田、米倉の突破に、船山、クレーベが呼応し、ゴールに迫る。

コーナーキックも2桁を数えるも、どうしても決まらない。
ロスタイム、最後の最後、為田に訪れた決定機も、決めきれず、両軍痛み分け。
スコアレスでタイムアップとなってしまった。
残念。

試合を通じて、ジェフ、ヴェルディ、改めて似通ったチーム、共通する問題を抱えたチームの戦いと感じた。
相手に簡単に読まれてしまうような緩いパスが散見されること、
ゴールまでの最短ルートであるシュートを選ばずに、味方を探してしまうこと、
あるいは、ゴールの周囲でボールを回してしまい、そのうちボールを奪われてしまうこと。

イエローカードを受け、2試合出場停止。
シーズンを一足先に終えてしまったアンドリューが試合後コメントでこう話している。

『シーズンを通じて自分たちのサッカーをやることができなかった。』

その通りだろう。
観戦している自分も、同じ感想を抱く。
が、プレーするのは選手だ。
もしも思い描く理想のサッカーがあるなら、シーズン中に、「なぜ」そこに近づけなかったか。
あるいは、「自分たちのサッカー」とはどんなサッカーか、そもそも見失っていたのではないか。
そこと向き合い、変わらなくては。
アンドリューの言葉からは、勇人の引退を惜しみながらも、「なぜ」勇人が引退を選んだか、その意味がわかっていないように感じてならなかった。

勇人、寿人を観始めて、もう20年以上が経つ。
こうして2人が並び立つ姿を再び見るのには、18年が必要だった。
そして、この2人の姿を選手として見る事が出来る事はあと2試合だけだ。

残り試合、どれだけのプレー時間があるのかは分からない。
やり残した想いを残さないよう、戦い抜いて欲しい。

そして、改めて、この試合で、40節でようやくJ2残留を決める事が出来た。
正直に言えば、J2残留を目標として戦わなくてはならなかった事は、悔しいし、情けない。
それが、今現在のジェフの立ち位置、身の丈だと分かってはいてもだ。
こんなシーズン、本当にクソ喰らえだ。

良かった、残留出来たで一息ついてなんかいられない。
チームの状況を俯瞰して、今季の問題を洗い出し、
来季に向け、準備を整え、戦えるチームを作り直さなければならない。
今日を、そのスタートにしなくては。

その一方で、江尻監督への感謝が浮かぶ。
今季、苦しい状況でチームを引き継ぎ、思うに任せない成績、戦いぶりに悩みは深かった事と思う。
けれど、逃げる事は決してなかった。
二度目の監督を引き受けた事も、残留を勝ち得た事も、江尻監督がジェフに対して誰よりも強い覚悟があるからこそ。
話せる機会があるならば、J2残留ミッションの完遂、本当にありがとうございましたと伝えたい。

残り2試合、江尻監督が描く未来のジェフの姿が垣間見れるか。
それも楽しみにしつつ、今季を締めくくってゆきたい。

試合後には、若狭、近藤、小池の3人が挨拶に。
チームを離れても、こうして戦うたびに再会できるのは嬉しいこと。
3人とも、また来年。