監督は攻撃的な姿勢を貫けていたか 第18節 vs鹿児島ユナイテッドFC ○2-1
- 2019.06.16
- GAME REPORT
- 鹿児島ユナイテッドFC
2019/06/15(土)18:00
フクダ電子アリーナ
J2第18節
千葉 2(0-0,2-1)1 鹿児島
<得点>
67分 千葉 9クレーベ
73分 千葉 10船山
77分 鹿児島 32牛之濱
梅雨本番を思わせる、強い風雨に見舞われたフクアリ。
迎えるは鹿児島。
前節に続き、順位の近い相手との大切な一戦になった。
スタメンは、前節からゲリア→茶島。
そのゲリアはベンチからも外れ、代わってベンチには下平が入った。
試合前のテーマは、前節停滞した攻撃を如何に取り戻せるか。
守備の立て直しから、攻撃の構築へ、そして攻守の引き出しを使いこなすバランスある戦い方へ、チームは段階を重ねている。その過程で、前節は二歩三歩後退した内容だった。どんな試合を見せてくれるか。
キックオフを迎えても、天候は雨。
フクアリのピッチはたっぷりと水を含み、気温も低い。
ジェフが前から仕掛けるには、絶好のコンデシションが整っていた。
そして、笛と共にジェフが畳み掛ける。
クレーベに向けて縦パス一本、そこから右サイドに展開し、茶島のクロスで攻撃の口火を切ると、クレーベ、旭らが次々にシュートを放っていく。
いきなりのラッシュに、やや面喰らった様子だった鹿児島も、GKアン・ジュンスを中心に早い時間の先制点は許さない。ディフェンスと、中盤の4人がそれぞれ、綺麗なラインを描いて、スペースを潰しにかかる。
両チームの攻守が目まぐるしく入れ替わる展開。
ジェフは、前から激しくプレッシャーをかけ、波状攻撃を仕掛けるも、鹿児島はボールを掴むとシンプルに縦に速くボールを動かしてくる。特に4バックの左、ジェフユース出身の砂森和也は、ギャップの出来る茶島の裏のスペースを何度も突いて、再三再四の突破を見せる。
前節、栃木の90分よりもよっぽど見応えのある10分間の探りあい。
やや鹿児島ペースになりかけたところで、後方から長いパスが茶島に入り、カットインしながら強烈なミドル。ポストを叩き、ゴールならず。
素晴らしいシュート、素晴らしいセーブの応酬。
さらにクレーベがシュートチャンスを迎えるも、相手の必死のブロックに遭って得点できない。
この日のジェフは、クレーベがボールを収め、展開し、茶島、堀米、船山、為田の4人が、前への矢印の向きを揃えて攻め込む事が出来ていた。
この前の選手の動きの中で、堀米がドリブルで仕掛けてアクセントを加えたり、あるいは、旭やアンドリューが、自らボールを持って前に出張る事で、相手のマークを撹乱し、シュートコースを作り出すことが出来ていた。
その中で、中心になっているのは船山。
背番号のせいでは無いだろうが、自分でゴールを狙いながらも、周囲の選手を活かすプレーが試合ごとに幅が増えている。今の船山は、ストライカーでありながら、チャンスメーカーでもあり、周りの選手に喝を入れるリーダーでもある。
居るといないのとでは、ジェフが別のチームになってしまう。
しかし、そうして攻勢を仕掛け、シュートを浴びせかけても前半はゴールを割る事が出来なかった。船山の強烈なミドル、堀米のドンピシャのヘッド、いずれもゴールには至らない。
こう言う展開は、押しながらも点を取れない展開は、とにかく先に点を奪わねばペースを持っていかれてしまう。
鹿児島の縦に速い攻撃は攻められながらも鈍る事は無かった。
シュート数は少なくとも、攻撃を喰らうと、高い確率で被決定機となる。
前の4人、韓、牛之濱、酒本、五領の各選手は、連携が良く、判断に迷いが少ない。
そこにボールを回してはいけないのだが、ジェフは何でもないボール回しのシーンで、アンドリュー、乾らがミスパスを犯してしまい、何度か不要なピンチを招いた。
また、中盤で攻撃のタクトを握っていた旭へのプレッシャーを鹿児島は強くして、ボールを奪いに来ていた。攻撃回数こそ多かったが、前半は、圧倒的なジェフペースと言うわけではなかった。
迎えた後半。
とにかく必要なのは先制点。
アウェイで0-0で迎える後半でありながら、鹿児島のラインは、やや前がかりに。
そこに、ジェフが勝機を見出した。
51分、ジェフにしては珍しいカウンター。
中央、サークル手前で堀米がボールを受け、自らボールを運ぶと、右を駆け上がった茶島にパスを送る。絶好の位置でボールを受けた茶島がクロスを送ると、頭を振って合わせたのはクレーベ。
これが見事に決まって待望の先制点。
クレーベが茶島を抱きかかえ、船山、堀米らと抱擁を交わす。
そして大きな雄叫びを一声。
勢い付くジェフは、54分にも堀米がペナルティエリアの中をドリブルで切り裂きながらシュート。キーパーに弾かれたところに、船山が飛び込むも、角度が厳しく枠外。
それでも、その直後に今度はクレーベの落としに、また堀米が反応。
縦に突破して、中に折り返し、今度こそ船山。
堀米と抱き合い、一気に2-0突き放す。
1点ではなく、2点。
さらにゴールを奪える機運はあったが、鹿児島もまた何も諦めてはいなかった。
64分には、自陣から長いボールを砂森へ。
茶島のカバーが間に合わず、中に折り返されたボールをダイレクトで牛之濱が決め、一点差に。ゲームは、勝負の勘所を迎えた。
攻撃的な選手を追加して同点を狙う鹿児島に対して、江尻監督はここから守り切る戦い方にシフトしていった。結果的に、2-1で勝利したので、この後の采配は一つの正解だったのだろう。
ただ、今日に関して言えば、まだ動けそうだった堀米を下げ、船山を下げ。
鹿児島が同点に追いつくために上げてきたラインの裏を狙える選手を外していったのは、守りきるというよりも、相手の攻撃機会を一方的に増やしてしまいかねない悪手ではなかっただろうか。
時間と共に、足がつる選手が出始めてはいた。
クレーベにもボールは入りにくくなっていた。
堀米、船山に加え、寿人のような縦に速い選手を投入して、鹿児島の背後を牽制するカードを切れていれば、主導権を手放さずに、攻撃的な守りをする事が出来たのではないだろうか。
相手にとって危険な選手を下げ、
相手に「引いたな」と思わせる交代策は、
攻勢を呼び込む危険な一手に映った。
相手の攻撃機会そのものを減らす事が、何よりの守備ではないだろうか。
鹿児島の走力に劣勢を強いられる中、
為田をはじめ、各選手が粘り強くボールを追いかけて、鹿児島の攻撃を遅らせ、6分のロスタイムを何とか凌ぎきって4試合ぶりの勝利。ベンチメンバーも含めて、試合後はピッチ中央に大きな輪が出来、安堵の表情を各選手が浮かべていた。
久しぶりの勝利に喜びつつも、
チームが壁に当たっているようにも感じた。
・攻守のバランス
・90分を戦うスタミナ
・主導権を握る采配
エスナイデル前監督も苦しんだ、成長の踊り場。
江尻監督は、壁を乗り越える為に、段階を踏んでチームを立て直して来ていると思う。だからこそ。一試合の中で、流れを止める事無く、より強い流れを作るような采配をお願いしたい。より強気に。
攻撃的に主導権を握れているなら、よりその流れを後押しする一手を。
押し切れるのなら、それに越した事はない。
時間が少なくなったら、ただ守りを厚くするのではなく、
相手が背後を気にして仕方なくなるような、攻めの一手を交えた守りを。
そして残りわずかな時間を、泥臭く使い切る守備を。
次の柏戦、ネルシーニョ監督相手に、強気の江尻采配が見られる事を期待したい。
試合後、鹿児島の砂森選手がジェフ側へ挨拶にやって来てくれた。
1点を返されたクロスだけで無く、試合を通じてお世辞抜きに、素晴らしいプレーだった。
本人が試合後に語っていたように、気持ちが入っていたのだろう。
琉球の和田選手もそうだったけれど、トップに上がれなかった選手が、こうしてフクアリに戻って来てくれるのは、嬉しくてならない。プロ選手として、これからますます活躍して欲しい。陰ながら応援しています。
ジェフのアカデミーで育てて貰ったからこそ今があると思っています。試合で負けたのは本当に悔しいですが、鹿児島ユナイテッドで結果を追求しもっと自分自身成長できるように頑張りたいと思います。今日は本当にありがとうございました!#鹿児島ユナイテッド#ジェフ千葉
— 砂森和也 (@sunasnasna) 2019年6月15日
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