江尻監督就任後のチーム作りを振り返る

江尻監督就任後のチーム作りを振り返る

長崎戦のレポートで触れた、江尻監督のチーム作りの過程について、

ここまでの12試合を順を追って振り返って考えてみたいと思います。

就任後の成績は、ここまで4勝4敗4引き分け。

直近の長崎戦は大敗した事もあり、厳しい声も耳にしますが、難しい状況でチームを引き受けた江尻監督。
ここまでは段階を追って、冷静にチームを立て直しているように映ります。

12試合を3つの段階に区切って考えてみます。

<第一段階> 
第5節・京都戦 ~ 第9節・岡山戦
(5試合/2勝1敗2引き分け)
テーマ「守備の立て直し」

エスナイデル前監督の末期は、攻守のバランスを取ろうとした結果、ハイライン・ハイプレスによるエリア制限、オフサイドトラップ、GKによるDFラインの裏のカバーと言った守備のルールが消滅。ノーガードでカウンターを食らうような状況になっていました。

そこで江尻監督は、ラインを下げ、システムは速さと高さのある新井を抜擢した3バックに変更。守備時には5バックで対戦相手が攻撃に使えるスペースを潰し、失点を減らすところからチーム作りをスタート。

結果、DFラインの裏側を一発で突かれるような失点は劇的に減少しました。

一方、続出した怪我人がチーム作りの大きな足かせに。
4節に怪我した熊谷に加え、小島、船山、勇人、田坂が相次いで負傷。
ボランチは壊滅状態になってしまい、苦しいやりくりを強いられます。
その中でも、勇人の負傷でボランチで緊急出場し、好プレーを見せていた田坂の長期離脱は痛かった。

田坂は、シンプルなボール捌きでリズムを作り、縦パスも供給。
チームの中心として機能し始めていました。
彼の存在があってこそ、攻守の切り替えのスイッチが入り、試合中、時間帯によってはハイライン・ハイプレスを取り入れて、「ジェフの時間」を作ろうとしていたものの、それも頓挫。

攻撃への道筋が遠回りする事になってしまいました。

<第二段階> 
第10節・横浜FC戦 ~ 第13節・山形戦
(4試合/1勝2敗1引き分け)
テーマ「攻撃構築への布石」

上位との連戦が続いたこの時期は、「安易な失点はしないが、得点も奪えない」状況から脱する為に、選手を入れ替えつつ攻撃的な戦い方への切り替えを模索。

ワントップには、試行錯誤の末にクレーベが定着。
加入当初は、周囲となかかなか噛み合わずに苦労したものの、徐々にコンディションを上げて来ると、ポストプレーで前線に基点を作れる彼の存在が不可欠に。船山が負傷から復帰すると、2人のコンビが機能し始めます。

一方、田坂の負傷で縦パスへのリズムが失われると、再びサイドからの攻撃が多くなり、「個」の力で突破が出来るかどうかが求められるようになりました。
この過程で、下平・ゲリアから、為田・茶島に両翼が変更。

攻撃的なメンバーがスタメンに並び、次の段階への布石が打たれました。

<第三段階> 
第14節・岐阜戦 ~ 第16節・長崎戦
(3試合/1勝1敗1引き分け)
テーマ「主導権と先制点を奪う戦い方へのシフト」

ここまでのチーム作りで、攻撃的に戦う準備は出来ていました。

迎えた岐阜戦。

船山の相方には、TGで調子を上げていた堀米を起用。
より縦への推進力を強化。
さらに3バックの左には、エベルトに代えて、守備のリスクはあるもののボールをキープし、前に運ぶ力のある乾を起用。

ハイライン・ハイプレスで主導権と先制点を奪いに行く戦い方に回帰し、シュート数も目に見えて増加。これが功を奏し、岐阜には、5-1の快勝。ここから、3試合連続で同じ先発メンバーが続きました。

ただ、その後の東京V、長崎戦は、多くのチャンスを作りながらも決め切れずに、1敗1分。
課題を残しながら、現在に至ります。

<現状の課題>
「決定力」
「スタミナ/試合中の緩急」
「守備のリスク管理」

さて。
12試合を経て、エスナイデル監督の目指していたサッカーに近い形に戻って来ているように思います。

そうすると、課題もまた似通ってくる訳で。

エスナイデル監督の失敗は、ハイライン・ハイプレスの攻撃サッカーを勝つための手段として用いるのではなく、相手がどんなサッカーをしようが関係なく、理想とするサッカーを試合で再現する自体を目的としてしてしまったことでした。

それを踏まえると、江尻監督がこれから取り組むのは、ハイライン・ハイプレスの攻撃サッカーも、就任直後に取り入れた5バックによる守備戦術も、勝つための武器として試合の中で使い分けられるようにする事だと思います。

また、相手を分析して、相手の良さを消す試合運びも、エスナイデル監督はやろうとしませんでした。

なので、これから先の試合では、相手の出方を見ながら、試合の中で戦い方を大きく変えるジェフが見られるんじゃないかと思っています。

一方的に押されながらも、5バックと低いラインで粘り強く守って、機を見てラインを押し上げ、ハイプレスとショートカウンターにシフトするような試合。
あるいは逆に、前半からハイライン・ハイプレスで畳み掛けたと思いきや、リードを奪ったところでラインを下げ、カウンターで仕留めにかかるような試合運び。

エスナイデル監督が目指したサッカーも、武器の一つとして使い分けていってくれるのではないか。

ここまでの江尻監督の戦いぶりをみて、そう言うジェフをこれから作ってくれるのではないかと期待をしています。そして、さらにその先には江尻監督が思い描いている進化形のサッカーがあるはず。

まだまだ順位が厳しい状況なので安穏としてはいられませんが、一戦一戦の勝敗に厳しくありながらも、江尻監督のの考えを読み解き、チーム作りのどの段階なのか、物差しを頭の中に持って応援したいものです。

これからジェフは必ずもっと良くなる。
ゆっくり、じっくりとではあっても、江尻監督はチームを正しく前に向かせていると思います。

(公式)2019年 試合日程・結果

↓ 第5節京都戦~第16節長崎戦までの布陣の変遷


試合前の怪我人 18熊谷
千葉1△1京都 シュート12本

就任後初戦、システムを3バックへ変更。新井を抜擢。
ハイライン・ハイプレスをいったん放棄し、DFラインを低く構えて守備の立て直しを図る。
攻撃面では縦パスが明らかに増えた。
しかし、この試合で14小島、10船山が負傷


試合前の怪我人 18熊谷、14小島、10船山
福岡0○1千葉 シュート12本

前線のメンバーを変更。浩平がスタメンに。
試合前練習で勇人が負傷。田坂が急遽ボランチで出場。
期待以上のプレーを見せて、終始、試合の主導権を握り、
アウェイで監督交代後の初勝利。


試合前の怪我人 18熊谷、14小島、10船山、7勇人
千葉1○0琉球 シュート9本

田坂を引き続きボランチで起用。
さらに、寿人を初の先発起用。
その寿人の得点で、この時点で開幕以来負け無しの琉球に勝利。連勝。


試合前の怪我人 18熊谷、14小島、10船山、7勇人
金沢1●0千葉 シュート3本

前節からメンバーを寿人からクレーベに代えた以外は変更無し。
連戦で疲労困憊。早々にスタミナ切れを起こして防戦一方。点差以上の完敗を喫する。


試合前の怪我人 14小島、10船山、7勇人
千葉0△0岡山 シュート3本

熊谷が怪我から復帰するも、入れ替わりで好プレーを見せていた田坂が大怪我を追って離脱。
前線では寿人が再び先発起用されるも、得点は生まれず。
茶島、乾も先発で起用。乾は目立ったインパクトを残せずに交代。


試合前の怪我人 14小島、10船山、7勇人、6田坂
横浜FC3●1千葉 シュート8本

安易な失点はしなくなったものの、得点力も低下。
その解消を狙って、クレーベと寿人の2トップ(あるいは、寿人と浩平の2シャドー)、さらに為田をウイングバックで起用し、攻撃的な布陣をアウェイながら選択。

しかし、2トップに得点は生まれず。時間が経過するほどに運動量が低下。
終盤に連続失点し、監督交代後初めての複数失点で敗戦。


試合前の怪我人 14小島、7勇人、6田坂
千葉0△0大宮 シュート7本

GW上位三連戦のスタート。
得点力、運動量のある大宮に対してアランが福岡戦以来の先発。前線からの守備で貢献。
何とか凌いでスコアレスドローで試合を終える。


試合前の怪我人 14小島、7勇人、6田坂
甲府1○2千葉 シュート2本

船山がスタメンに復帰。

茶島が右ウイングバックに起用され、両翼が攻撃的な選手になった。

一方、鳥海がDFラインの中央に抜擢。
攻撃的な布陣の効果は現れず、試合の主導権を握ったのは甲府。
公式記録シュート2本ながら、2得点を奪って勝利。


試合前の怪我人 14小島、7勇人、6田坂
山形3●1千葉 シュート5本

勝利した前節と同じスタメンでスタート。
前半は互角か、ジェフがやや攻勢。
相手の隙を衝いてクレーベが先制するも、後半は様相が一変。木山監督の術中。
鳥海の負傷交代で隙が生まれ、スタミナ切れから終盤に連続失点して敗戦。


試合前の怪我人 14小島、7勇人、6田坂、16鳥海
千葉5○1岐阜 シュート19本

個で打開できる堀米、
ビルドアップを期待し乾WBではなく、左DFで先発起用。

エスナイデル前監督の観戦に合わせたかのように、序盤からハイライン・ハイプレスを敢行。
序盤から主導権、先制点を奪い、5得点で押し切った。


試合前の怪我人 14小島、6田坂
東京V1△1千葉 シュート12本

前節の大勝を受けて、メンバー変更は無し。
前節同様のハイライン・ハイプレスで主導権を握るも、前半は1得点止まり。
修正してきたヴェルディにワンチャンスで同点にされ、暑さもあって終盤は両チーム手詰まり。


試合前の怪我人 14小島、6田坂
千葉1●4長崎 シュート17本

3試合続けて、メンバー変更は無し。
序盤から圧倒的に攻勢を仕掛けるも、この試合も決定力に欠け、逆にCK1本で失点。
後半もガードの上から殴り続けるも、同点に追いつけず。
カウンターから、さらに3失点し大敗。