日本平には良い思い出が無い。行くたびに雨が降るわ、雷だわ、停電するわ。古くは下川が沢登のシミュレーションで退場喰らうわ、去年は初優勝に向けた快進撃に水を刺されるわ。そして今日も期待は裏切られ、焦燥だけが帰り道に残った。
日が照り付け、真夏のような暑さのスタジアム。強風が吹き、大旗は思うように振る事が出来ない。集まったサポーターは、100人と言ったところだったが「5月初勝利」を目指して、必死に声を振り絞っていた。試合前のアップの時にも、マルキや勇人の新応援を歌ったりして盛り上げに懸命だった。
そんな中、一人早めにグラウンドに現れていたのは羽生。エジさんとマンツーマンで話しながら、自問自答しているようだった。チームの不調に、自身も迷ってしまっているのだろうか。
前節の監督コメントで選手の入れ替えも示唆されたが、メンバーは不在の茶野・ジェレを補うのみの小変更。阿部がDFの中央に入り、大輔と結城がストッパー。坂本が勇人とボランチを組む。
立ち上がり、勢いよく清水ゴール前まで攻め込むがシュートには至らない。今日は最初から行くのか?と思ったのも束の間、中盤のミスパスを清水に拾われてカウンターを浴びる。特に、序盤は坂本⇔勇人の連携が合わず、最終ラインに相手の攻撃がマトモに浴びせられてしまっていた。
立て直す間もなく、前半5分で失点。OGのようにも見えたが、鶴見に押し込まれたらしい。CKからあっさりと得点を奪うあたり、ジェフが出来ない事をされているようで空しくなる。
失点して、前に出るかと思いきや、相変わらずグズグズとした展開が続く。
いい時の、「ボールを奪ったら全員が相手ゴールに向かって走り出す」そんな動きは無く、動きそのものが少ない。攻め込んでも、ゴール前で見方同士でボールをなすりつけ合うような状態。
たまに、こぼれ球を村井あたりがシュートするのだが、これも枠に収まらない。俺が決めてやる!とばかりに誰か、ドリブルでも仕掛けてみろよと叫びたくなる。お馴染みの、モヤモヤした空気が流れる。
前半もこれで終わりかと言う時に、相手に完全にDFを破られてシュートされる。これは、櫛野がおさえる。けれども、直後の相手シュートがバーに当たったところを、久保山に押し込まれて失点。いらいらが募る。結城あたりは頑張っているのだが、なにぶん最終ラインが丸裸にされすぎる。ボランチの位置で、敵が止まらない。このあたり、先日坂本が指摘していたように、勇人の意識が攻撃に行き過ぎているからとも感じる。サボっているわけでは無いのだが、本来は攻撃<守備のはずが、攻撃>守備になってしまっているのではないだろうか?
重苦しい空気のまま、後半へ。
ボールが来ず、何も出来なかったマルキが林に交代。それ以上に何も出来なかったサンドロが残ったのは、単純にコンディションの差か。さらに、村井も交代。前節、監督が言った「信じすぎた」選手と言うのは、彼の事か?中島が入り、WBが右に坂本、左に山岸、ボランチには中島が入った。
林が持つ「空気」のままに、2点を取り返す攻撃モードに入る。
ところが、FKから久保山に飛び込まれ、あっさりと3点目を奪われる。まるで去年の西京極のような展開に、しばし無言になる。
悲しい事に、「勝ちたい」と言う気持ち、いや「このままじゃ情けな過ぎる」と言う反発心が出てきたのは、ここからだった。
シュートを撃てる林が入った事で、フィニッシュで終わる意識が出始める。
13分、林が待ってためて撃ったダイレクトボレーでようやく1点を返す。ボールを奪って、センターサークルに戻り、さぁ行くぞとばかりに気合を入れ直す。清水は、守りきろうと言う気持ちになって、圧倒的なジェフペースになる。
坂本、山岸の両サイドから攻撃をつくり、中に合わせようとするが、サンドロが全く期待に応えられない。キープ得意でない、足技の無いサンドロにボールが入ると、相手がワっと寄って来て、ボールが奪われてしまう。それに、あと一歩のボールに体ごと投げ出すような気合が感じられない。自分が「エース」にされてしまうと、活きて来ない選手なのではないだろうか?
代わって入った中島も、良いプレー(=シンプルなプレー)もあるのだが、考えと自身の技術の間にギャップがあるのだろう、少ない相手のカウンターの起点になってリズムを作り出せない。彼もまた、最後の粘りが足りないように感じてしまう。
それでも、流れはジェフ。押し込んで、なんとかしようとするがシュートが撃てない。
後半30分までのシュートの少なさは、↓のニッカンスポーツのサイトを参考にして欲しい。
http://www.nikkansports.com/ns/soccer/jleague/score/2004/20040529siic.htmlさらなる攻勢を求めて、監督は羽生に代えて工藤を送り出す。
羽生は、疲労とプレーに迷いが見えていた。交代も止む無し。ただ、ここで巻では無く、工藤が選ばれたあたりに監督の新しい考えが見えるように思う。工藤は、実際期待に応える働きだった。確かに、出場してしばらく「流れ」に乗るまでに時間はかかり、ミスもあったが、強烈なシュートも放った。羽生には無い、タメやスルーでも攻撃を作って得点の可能性を感じさせた。羽生の交代役としては、これからも使ってみたい。
この交代もあって、さらなる攻勢を仕掛けるジェフは、後半30分過ぎから、さらに猛攻。
「なんでコレが最初から出来ねぇ!!」
そう叫ばなくちゃいられない攻勢だ。その中で、試合を通じて最も勝ちたい気持ちに溢れ、走っていた大輔が阿部のクロスを頭でねじ込む。あと1点!
完全に受身の清水は、あからさまな時間稼ぎで勝ちにこだわる。交代の札を見て、突然地面に寝転んだアラウージョなぞ論外だが、勝っているチームからすれば常套手段だ。
ロスタイムも迫った時、工藤のラストパスからサンドロが右足シュート!しかし、「枠」・・・なんで枠なんだよ・・・助っ人なんだろうが、しっかりしてくれ!
最後の最後、山岸のコーナーに大輔が渾身のヘディングを放ったところで、試合終了・・・。2−3、結局5月は一つも勝てずに終わってしまった。
引き上げてくる選手達に、「明日へのマーチ」が歌われる。
だけれども、同じ事を繰り返す選手達にはただ漠然と明日を待つのではなく、変わってもらわなくてはならない。ジェフは、オシム監督の下で躍進した。良いサッカーをしていると評され、メディアもこぞってジェフを取り上げた。何故、代表選手がジェフから出ないのかとも言った。
そんな中、選手達、そしてサポーターも「何か」を忘れてはいないか?監督はいつも言っていた。ジェフに良い選手は居ないと。だから、全員の力を合わせなくちゃいけないんだと。それをもし忘れて居るのだとしたら、もう一度ジェフは原点に戻らなくちゃいけない。自分たちは決して一人では強くないんだと。
一人一人が持つべきは「責任」ジェフのイエローのユニフォームを着て、市原のサッカーを実現する者としての「責任」だ。選手達は、十分過ぎるほどの練習をしている、悩んでいる選手も居る、でもその結果が試合で出せない事が何よりも観ていて歯がゆい。
無心からはじめた、去年に立ち返って、最初から全力。今やれるものを全部出し切って欲しい。そして、チームが悩む今、新しい力の台頭にも期待したい。去年、大柴や武藤の出番が奪われていったあの時のように、レギュラーのケツを叩く、イキのいい選手達を。
今日の日の工藤のように、出来るところを見せて欲しい。
ジェフは、まだ何も成し遂げては居ない。
それを思い出して、挑戦者たれば、「市原のサッカー」は取り戻せるはずだ。
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5月29日(土)15:00 日本平スタジアム・晴れ
清水3(2−0、1−2)2市原
【得点】
前半8分:清水・鶴見
前半44分:清水・久保山
後半5分:清水・久保山
後半13分:市原・林
後半38分:市原・斎藤